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社会変革型リーダー特論
この講義は、青山社中株式会社 筆頭代表CEOの朝比奈一郎先生が担当されていました。朝比奈先生は、東京大学法学部を卒業後、経済産業省勤務を経て、新しい霞が関を創る若手の会(NPO法人 プロジェクトK)の初代代表を務められました。
そして改革をより進展させ、日本再生を果たすために中からの改革は後進にゆだね、2010年に「世界に誇れ、世界で叩ける日本のための人財・政策・組織を創る新しい会社」として青山社中を設立されました。
○○社中という言葉でピンとくる方も多いかと思うのですが、坂本龍馬が結成した亀山社中をヒントにネーミングしたとお話していました。著書の「やり過ぎる力」の表紙でも坂本龍馬が登場します。
本講義は、社会変革型リーダーと呼ばれるに相応しい実際の事業家の皆さんからお話を伺い、その後朝比奈先生と事業家の皆さんとの対談で内容を深めていくという形式でした。
1回目の講義でリーダーシップについて前提を講義いただいたのですが、リーダーシップに重要なポイントは「始める力」(始動力)であるとのことでした。(この部分は上述の著書に詳しく記載がありました。)
その中で社会変革型リーダーとは、「国や社会全体について考え、変革に向けたアクションを取る人材」をさしていて、以下のような相反する特徴を併せ持った存在です。社会のことを知れば知るほど制度に縛られてしまい動き出すことができず、変革に向けたアクションを取っていく際には国や社会のことを軽視してしまうことが多いのですが、社会変革型リーダーは、制度や制約などのことも踏まえたうえで社会の変革に向けて、非営利セクター(NPO)、政治・行政、ビジネスにおいて実際にアクションを取っていくことができるのです。
具体的には、以下の方々のお話を伺うことができました。
・ヤマガタデザイン株式会社 代表取締役 山中大介氏
・株式会社LITALICO 代表取締役社長 長谷川敦弥氏
・千葉市長 熊谷俊人氏
・ウェルスナビ株式会社 代表取締役CEO 柴山和久氏
・株式会社CAMPFIRE 代表取締役 家入一真氏
・株式会社AsMama 代表取締役CEO 甲田恵子氏
・認定NPO法人カタリバ 代表理事 今村久美氏
・株式会社イトーヨーカ堂 代表取締役社長 三枝富博氏
・認定NPO法人 かものはしプロジェクト 共同創業者 村田早耶香氏
・株式会社ジンズ 代表取締役CEO 田中仁氏
・ASTROSCALE PTE.LTD.CEO 岡田光信氏
(肩書は、録画当時)
どのお話も素晴らしかったのですが、LITALICO・AsMama・カタリバ・かものはしプロジェクトなどのお話は非常に心打たれるものがあり、拝聴出来て良かったと感じました。
ここからは特に印象に残った、カタリバの今村氏、かものはしプロジェクトの村田氏について簡単にまとめます。
カタリバの今村氏は、「どんな環境に生まれ育っても、未来を創り出す力を育める社会」をビジョンとしてサードプレイス(自分で選択した居場所)やサードリレーションシップ(ナナメの関係)を届ける活動を行っています。原動力は今村氏が大学時代に感じた「大学に居るような意欲の高い人たちだけが機会を持っているのはおかしい」という思いであり、何度も「フラストレーション」と語っていました。問題意識も、探究学習事業・不登校支援事業・困窮世帯向け支援事業・災害時子供支援事業と多岐にわたっていて、その時々でのフラストレーションを活動につなげ続けていることが印象的でした。特につながりの重要性については、医師である私にとっても身近な課題で、高齢化社会で地域から孤立しがちな高齢者に対して、社会的処方のようなつながりを提供する活動にもつながる考え方だと感じました。
かものはしプロジェクトの村田氏は、カンボジアでの人身売買・売春の事例を授業で聞き、実際にカンボジアへ訪問し光景を目の当たりにしたことから活動が始まったと話していました。「長期的には国連職員になればもっと大きな金額で対応ができたかもしれないが、目の前の被害を未然に防ぐことができるのならと思い、個人での活動を開始した」と語っていて、上記した社会変革型リーダーの社会と変革の両側面を併せ持つことを体現していると感じました。世界というレベルで時代を考えた際に、新興国市場の拡大とともに問題が表面化されつつある「子どもを取り巻く不条理」に真正面からかかわっていくという姿勢に感銘を受けました。私の勤務する地域には、フィリピンやカンボジアからの農業実習生が多く、農繁期には村民の7人に1人が農業実習生となるほどの人数が働いています。言語や文化の壁を感じながら、時には体調を崩し外来や入院での診療を要する場面も遭遇するのですが、外国人であっても必要な際に十分な医療を享受できるように体制の整備や支援を行っていく必要があると感じており、村田氏の示した大局観を参考に実現していきたいと感じました。
本講義での学びを活かして、農村地域で勤務する医師として社会変革型リーダーとしての構想力や始動力を示していきたいと感じました。