中国の技術力とチャイナリスク|ICTと社会
新型コロナの世界的感染拡大について、発生源となった中国の責任を糾弾すべきだと一部の人たちが主張している。私の意見としては、そんなことを追求しても意味ある結果は何も産まないし、むしろ中国とよく協力して、こうしたパンデミックの再発を出来る限り防ぐ方策を検討するというやり方のほうが良いと思う。
米中摩擦がエスカレートする中で、「セキュリティ上の観点(チャイナ・リスク)」から、通信システムの開発・導入においても、米国が中国勢、特にファーウェイ(華為技術)を排除する動きが激しくなっている。日米同盟を重視する政府の要請により、日本の大手通信キャリアもファーウェイのシステムは採用していないはずだ。
ただはっきり言って中国の技術力は高い。5G無線通信システムの開発では、事実上、国際標準化に基づくシステム開発をリードしているのは、北欧の2社と韓国、中国の計4社に絞られているが、その中でも特にファーウェイの技術力は抜きん出ていると思われる。残念ながら日本メーカーは周回遅れである。かつての3G時代における「ガラパゴス化」の罠により、世界の標準化競争から脱落してしまっているのが実態だ。
私は率直に言って、中国との付き合いは賢くやるべきだと思っている。トランプにべったり追随して、中国の良いところを何も取り入れられなくなるのは愚かであり、むしろ日本の国益を損なう行為だ。
もちろん習近平政権誕生(2012年11月)以来7年余り、中国が軍事力を増強させ、覇権拡大を進めようとしていることは脅威ではある。ただ日本は隣国として、これまでも様々なチャネルで交流を積み上げてきた。その多元的交渉チャネルをもっと活かすべきだ。
老獪な政治家として知られるマレーシアのマハティール元首相(94歳!)は、昨年5月に日本で記者会見に答えて語っている。
マハティール氏の言うとおり、米国も国際政治の裏側でエグい諜報活動を行ってきたのは事実。チャイナリスクだけにフォーカスするのは公平性に欠けるとの主張はまさに同感だ。
欧州各国も同じような考えに基づき、トランプの顔をある程度立てながらも、是々非々の付き合いをしようとしている。
トランプの強硬姿勢も、はっきり言えば大統領選に向けた国内世論向けのポーズとも言える。
日本が中国と独自のチャネルで外交を行い、中国の高い技術開発力に敬意を払って一定のつながりを持っていくことは、日本の国益に適うだけでなく、東アジアの政治的安定にも寄与するものと考える。
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