見出し画像

今を騒がす通訳の違法賭博事件と昔の映画「人間の条件」の共通性---あなたがどの程度外国語が出来るのかという問題について考える----

(はじめに)


今、アメリカのメジャーリーグ野球で、大活躍している大谷さんは、日本でもアメリカでも大変人気で、同じ日本人として大変誇りに思います。しかしその大谷さんの日本人英語通訳が、とんでもない違法賭博事件を起こして今騒がれています。これらのニュースを聞いていて、私は60年も前の1960年ごろに見た映画「人間の条件」に出てきた場面を思い出しました。
 

(1)映画「人間の条件」


シベリア抑留された梶(かじ:仲代達也さん主演)がソ連軍の尋問をうけたとき、そのロシア語通訳の日本人が梶を裏切って、彼は罪を認めていると、全く反対に訳して、無実の梶を過酷な強制労働収容所送りにしてしまいます。私は、子供心に同じ日本人なのにこんなひどい通訳がいるんだと、ショックを受けました。大谷さんの場合も、英語が出来たらこんな悪いやつに引っ掛からなかったかなと思いました。
 

(2)舞台劇「オデッサ」


これに対して、友人から、次のような感想を受けました。
 「最近、逆に通訳が犯人をかばって、勝手にアリバイを作って通訳するという展開の舞台劇もある。それは、三谷幸喜さんの新作「オデッサ」という舞台劇だ。これを観に行ってきて、言語というものを考えさせされた。三谷幸喜さんらしい脚本だった。」
 そして、今回の事件に対しては、
「大谷さんもある程度(かなり)英語ができるので、うわべ程度の外国語は危険だ。外交で、得意がって、通訳を避けて英語でスピーチしている『偉い人』を見ていると、危機を感じる。」
 という感想も述べて来ました。
 
大谷さんは、ネットを見てみると、アメリカに行ったとき、数分の英語のスピーチをしたところ、発音もよく、英語が上手だと、アメリカで絶賛されたとの記事が多数ありました。
 

(3)フランスの税務署での面接 


そこで、私は、外国語をどの程度出来たら、自分はその言語をちゃんと喋れる、外国で問題なく生活が出来るのかということについて、ついつい考え込んでしまいました。
 
数分程度の英語のスピーチや発表が原稿なしで出来る人でも、税金や社会保険関係の英語は複雑すぎてよくわからないと、有名なユーチューバーの元大蔵官僚の方が言っておられました。確かに私も、フランスに1986年留学して銀行口座をフランスの銀行BNPで開くとき、フランス語では無理で、英語が喋れるフランスの行員さんに対応してもらいました。1年後、フランスの税務署に、フランス語の書類を作成して面接に行く時は、もうお手上げでした。日本で言う確定申告っていうやつですかね。日本の税金の書類だって、日本人でも日本語の用語が特殊過ぎてよくわかりません。私はいまだにそうです。当時、フランス語の納税申請書類を辞書を引いても引いても、どうしても意味が解らないので、そこの個所を大学の友人に聞きました。そしたら、「これは、お前のために何人の人が働いているのかって人数を聞いているんだ。」それで、私は、「私の妻1人だけだよ!」って答えたら、みんな大笑いして、「違う違う、たとえばお前が会社をやっていて、何人がお前のために働いているかっていうことだ!」う~んと、私は苦笑しながら、税金の表現は、ほんとに難しいなあと思いました。苦労してようやく完成した納税書類を持って税務署に面接(確定申告)に行くのですが、一人じゃとても無理だと思ったので、秘書の叔母さんに頼み込んで、ついて行ってもらいました。私、フランス国立研究所(CNRS)の研究員として雇われていたので、労働ビザでした。留学生と違い、税金の申告をやらねばならなかったので[1]、本当に大変でした。その頃は1,2分のスピーチはフランス語で出来ましたが、税務署の面接は、とても無理でした。
 

(おわりに)


あなたが、どこまで、語学が出来るかっていうのは、税務署に行っても、一人で対応できるというのが、一応、語学が本当に出来るってことかなぁと、私は今回結論として思います。となると、私の場合日本語だけかな。英語は、英語で論文や本書いているし、国際会議の発表も英語で出来るけど、税務署や社会保険なんか無理だなあ。フランス語は、35年振りに勉強再開して続けているけど、確定申告なんて絶対無理だわ。そういう時は、ちゃんとした誠実な通訳つけた方がいいですよね。
 
令和6年(2024年)4月21日 随筆
 
ご注意
[1] 留学生でもアルバイトをしている人は確定申告が必要です。
 


*なお冒頭の映画ポスターは、下記のURLから引用させて頂きました。
https://www.shochiku-home-enta.com/c/japanese/japanese-war/DB0337
松竹DVD倶楽部 人間の條件 第4部 戦雲篇

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?