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誤字脱字はなぜ起こるのか

(はじめに)

日本に住んでいて日本語ペラペラの中国人、李姉妹のYouTube <https://www.youtube.com/watch?v=QvE-r6_9HSQ>のお話を、大変興味深く拝聴させていただきました。日本では、昔から「君の作文には『誤字脱字』ある」という批評が、四字熟語を使ってなされてきましたが、李姉妹の今回の動画で、「誤字脱字」が起こる根本的な理由が、今日初めてわかりました。

中国人が漢字を思い出せない時の対処法

 
李姉妹によると、中国語には平仮名や片仮名はないので、文章を書いていて、発音がわかっても漢字を思い出せいないとき、中国人は次のように対処するとのことです。(1)発音の似た別字をとりあえず書いておく:これが、誤字の原因となる。(2)それも思いつかず、どうしても漢字を思い出せない時には、とりあえず空白にしておく:これが脱字の原因になる。(3)実は、文章書いているときは、(1)も(2)も、あとから見直したときにもう一度じっくり調べて直すつもりなのですが、書き終わったら、その直すつもりだったこともすっかり忘れてしまって、そのままになるので「誤字脱字」になる、とのことでした。なるほど、だから、昔から、「誤字脱字」と四漢字にまとめて表現されるんですね。初めてわかりました。
 李姉妹いわく、日本語だったら、漢字が思い出せない時には平仮名か片仮名でとりあえず書いておけるので便利です。今の中国語にも、一応発音記号のピンイン(併音字母)というものはあるのですが、中国語の文章の中にピンインなんかあるのはまず文章とみなされず、人様に見せられないほど大変恥ずかしいことだそうです。それで、つい空白のままになってしまうそうです。それで脱字が起こるのとのことでした。

1300年前の日本人もやっていた誤字脱字

この誤字脱字、同じことが大昔の日本でもあったことを思い出しました。1300年くらい前の奈良時代まで、日本では、まだひらがなも片仮名も発明されていなかったので、寺院や、大学(式部省直轄の大学寮)で学ぶ学問僧や大学生は、今の中国人と全く同じで、漢字だけの教科書で学んでいました。弘法大師が大学生の頃の話です。当時は、日本の高等教育は、中国語の教科書で中国語のみで、講義を受けていました。日本語の表記法も日本語の教科書もない時代の話です。それで、できの悪い学問僧の作文(中国語:漢文)が今も残っているのですが、それには、まさに、漢字が思い出せず、文中に「誤字脱字」が少なからずあるそうです。今回の動画を見るまで、誤字はともかく、何で脱字なんかがあるのだろうと、私には理由がピンと来ていませんでしたが、李姉妹の今回のお話で初めて理解できました。いやあ、平仮名も片仮名もまだない1300年前の日本人も、今の中国人と同じで理由で「誤字脱字」やっていたんですね。
 
現在、中国人も日本人も、パソコンやスマホで文章を打つので、筆やペンを持って、手書きで書くことは非常に減ってしまい、中国人も日本人も、漢字をど忘れして書けないという、現代病が共通して蔓延しているとのことでした。便利な世の中になって、新たな漢字健忘症という病が発生しているってことですかね。

(おわりに)


漢字健忘症への対策を、李姉妹は言っていました。中国人で漢字を忘れて困っている人は、手書きパッドと電子ペンを使って手書きで漢字を書くということをやっているとのことです。これが、忘れ防止になるそうです。日本人用の漢字対応手書きパッドは、ネットで調べてみますと、下記ものが載っていました。
https://jemtc-study.net/tegaki-pad-dashikata/
漢字健忘症の昨今の私も、これを使ってみようかと思いました。いや、漢字より先に人の名前が出てこない(笑)。
 
 
*なお、冒頭の写真は、漢字文化資料館のWeb page https://kanjibunka.com/yomimono/rensai/yomimono-6503/
から転載させていただきました。昭和30年に第1巻が出版された「大漢和辞典」(全15巻)の表紙の写真です。30年の歳月をかけ5万字もの漢字が 採録されているそうです。

2020年12月13日 随筆
2022年5月13日 加筆

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