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「アジサイ」葉にカタツムリが乗っていないワケ
酸性は青、赤はアルカリ性
土壌の性質で変わる花色
雨季に入るとあちこちでアジサイをみかけます。じめっと湿り気のある空気のなかで咲かせるその花の鮮やかさは、みるだけで心が華やかになります。
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赤みある紫や濃い青色、白色、桃色とカラフルな花を咲かせますが、この色の違いは土壌の性質によるものです。酸性の土壌では青みのある花が咲き、アルカリ性では赤みのある花が咲くそうです。子どもの頃、学校で「青のリトマス紙に酸性の水溶液につけると赤色になる」と習いましたが、アジサイの場合だと逆になるようです。
雑食性の陸貝も避ける
毒を有する根と葉っぱ
アジサイをみかけるたび、私は「意外とカタツムリが葉に乗っていないな」と思っていました。よくカレンダーの6月の絵などでアジサイの葉に乗るカタツムリをみかけるのですが、現実ではなかなかそういった瞬間をみかけることがありません。
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調べてみると、アジサイの葉と根には毒があり、雑食性で植物の草も食べるカタツムリでさえも避けるようです。そういえばカタツムリだけでなく、ナメクジやほかの昆虫類もアジサイの近くであまりみかけないような気がします。アジサイもカタツムリも雨季のシンボルなので、単純にセットで描かれることが多いだけのようです。
毒の成分はじつは不明
国内で中毒症状の報告も
アジサイの毒についてですが、じつはその成分は未だによくわかっていないそうです。「青酸配糖体」と呼ばれる有毒成分が含まれると考えられているのですが、検証されても明らかにすることができなかったそうです。
そしてアジサイの毒は、人体にも悪影響をもたらします。2008年の6月、とある飲食店で食事をしていた客が、料理に添えられていたアジサイの葉を食べてしまい、食後30分ほどで吐き気やめまいといった中毒症状を訴える事態となりました。アジサイの葉は大葉に似ているため見栄えがよく、刺身やだし巻き卵に添えられて提供されることがあったようです。
症状はほかにも、顔面紅潮や痙攣、昏睡、呼吸麻痺といったものも報告されています。上記のケースは2、3日以内に回復されたそうで、現在ではアジサイの葉を料理に使用しないよう注意喚起されています。
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意外と危なげな一面のあるアジサイですが、じつは私、数ある花のなかでもアジサイが一番好きです。土壌の成分によって色を変えるというサイエンス的な神秘性にとくに惚れていて、色は薄い青色が気に入っています。今回、毒の成分も謎に包まれているということを知り、ますますその魅力に惹かれそうです。
参考文献
・稲垣栄洋(監修)『いのちのふしぎがおもしろい すごい植物図鑑』KANZEN 2021年
・羽根田治『野外毒本 被害実例から知る日本の危険生物』山と渓谷社 2021年
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