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「ヌートリア」水辺にすむ赤い歯の大型ネズミ

体重が5kg近くある
水陸両用の外来生物

 ネズミ、と聞くと私が想像するのは、手のひらに収まる程度の大きさの哺乳類といったイメージです。ですが、手のひらどころか自分の頭よりももっと大きく、体重が5kg前後のネズミも存在します。今回紹介するヌートリアが、そのひとつです。

ヌートリアの頭骨

 ヌートリアは河川や湖沼に生息する哺乳類で、足には水かきがみられるのが特徴です。ネズミの仲間らしく伸びた前歯も特徴的ですが、ヌートリアはその歯が赤いので目立ちます。この歯の赤みはエナメル質に鉄分が含まれているそうなのですが、それによって硬度が変わるのかどうかまでは不明です(わかる方はぜひコメントで教えてください)。

毛皮需要で南米から
持ち込まれ野生化に

 このヌートリア、日本でも野生で確認できるのですが、もとは南米から持ち込まれた外来生物です。毛皮目当てで持ち込まれたのですが、戦後の一時期には国により飼育が奨励されていたらしく、北海道〜九州まで全国38都道府県で飼育されていたそうです。

 現在、田んぼで稲作を食べる、畑で野菜を食べるなどの農作物被害が問題となっており、対策として専用の侵入防止柵が開発、導入されているところもあるそうです。報告のなかにはピーマンやネギといった独特な匂いを発する野菜は食べない、というものもあるそうです。

ヌートリアの剥製

海を泳いで愛媛まで
渡った可能性も指摘

 先述した通り、ヌートリアは水中・水上に適した動物ですが、泳ぐ能力はどこまで高いのでしょうか。その疑問の答えになりそうな事象が、2024年に起きています。

 2024年5月、中島沖を泳いでいるヌートリアが確認され、同年6月に愛媛県で初めてヌートリアが捕獲されたと報じられました。専門家によると、広島・岡山方面から瀬戸内海を泳いできた可能性があるとのこと。

 ヌートリアのみならず、外来生物の増加・拡大は、よっぽど好都合な環境変化(外来生物のみが不利になるような変化)が発生しない限り、人間の積極的な行動によって防ぐ以外方法はありません。改めて、ヌートリアの毛皮がブランド化する時代が来たりしないものでしょうか。そうしたらまた産業化のために違法に増やしたり逃したりする業者が出てくるでしょうか。フェイクファーの活用を訴える人々がいるなかで、時代錯誤になるのでしょうか。

 外来生物の問題については、いつかじっくり調べて記事にしたいものです。

参考文献
・ヌートリアを島民が草むらで発見、海泳いでやってきた? 県内初捕獲 朝日新聞2024年6月20日
・ヌートリア/巨大 したたか外来種 朝日新聞2016年2月13日
・農林水産省 農村振興局 農村政策部 鳥獣対策・農村環境課 鳥獣対策室(監修)『野生鳥獣被害防止マニュアル【中型獣類編】』2024年


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