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ドバトの観察から考えるドードーの地上性

もとは競翔や伝書用
外来種となった鳥類

 野鳥観察と聞くと、わざわざ山や川や海に出向かなければできないような気がします。ですが、案外公園や街中にいるような鳥たちを観察するのも面白いものです。そこにちょっとした知識があるだけで、見え方はかなり違ってきます。今回はドバトを例に、少し変わった私の野鳥観察の仕方を紹介しようと思います。

公園にいるドバト

 さて、今回の主役であるドバトは、奈良時代以前に持ち込まれたものが野生化した外来種です。帰巣本能が強く、伝書鳩として家禽化されたのが世界的に広まり、日本にも持ち込まれたとのこと。ドバトの利用は伝書鳩だけではありません。鎌倉時代の1208年、藤原定家の日記にてハトのレースが行われていたことが記されており、人々の娯楽にも活用された鳥類だということがわかります。

じつはハトと近縁な
1681年に絶滅した鳥

 伝書鳩にハトのレース。いずれの活用法も、ハトの認知能力と飛翔能力が評価されたことに由来することがうかがえます。しかし、この能力が乏しかったために生き残れなかったハトも存在します。そのハトの名は、ドードー。名前は聞いたことがある人も多いと思いますが、じつはドードーはハトと近縁な鳥類です。

 ドードーはモーリシャス島にかつて生息していたのですが、天敵のいないこの島で大型化し、飛翔能力もなくなったとされています。それほど安全な場所で生きていたためか、島に上陸してきた人間に警戒心もなく、あっという間に捕獲されて数を減らし、1681年に絶滅となります。

ドードーの模型
(2022年、大阪で開催の「わけあって絶滅しました。展」にて撮影)

 ドードーとドバト。外見はまったく異なる2種類ですが、その足指から痕跡をたどることができます。陸上性の鳥類は足指が2本以下(ダチョウの足指=2本、エミューの足指=3本)なのですが、ドードーの足指は前を向いた3本と後ろ向きの1本の計4本。これはドバトも同様で、木の枝をつかむのに適した本数とされています。

 ただ、ドバトは樹上よりも路上や公園の草地をトコトコと歩いている姿が目立ちます。もしかすると、ハトはもともと地上性の気質が強い鳥類なのでは、と個人的に思っています。

もし近未来の日本で
人がいなくなったら

 気候条件や生物相に違いはあっても、日本列島もまたモーリシャス島と同様に、周囲が海で囲まれた閉鎖的な環境下です。もしも近未来で、日本人が何らかの理由で絶滅して、ノネコやアライグマのような捕食動物も数を減らしたとしたら、私たちが日常的にみているドバトたちは、どのような進化を遂げるのでしょうか。

 ドードーの例に照らし合わせたら、やはり体が大型化して翼が小さくなって、完全な地上性になるのではないでしょうか。もしかするとさらにその先の未来になれば、もっともっと大型化して、まるで恐竜のような姿で日本列島の頂点に立つ存在になることも考えらえるのではないでしょうか。

こちらをみる1羽のドバト

 そうした目でそのあたりに当たり前にいるドバトたちを観察してみると、まるで未来の支配者が虎視眈々とその日を待っているような気がしませんか。そうした視点から生き物観察をしてみると、また違った面白みが味わえそうで、私は好きでやっています。

参考文献
・川上和人『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』新潮文庫 2020年
・細川博昭『身近な鳥のふしぎ』ソフトバンククリエイティブ 2010年
・今泉忠明(監修)、丸山貴史(著)、サトウマサノリ、ウエタケヨーコ(絵)『わけあって絶滅しました。』ダイアモンド社 2018年

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