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「生田神社のアイガモ」農業で活躍する鳥が飼われているワケ

罰当たりなニュースが発端で
不思議に思ったカモの存在

 2024年5月17日、兵庫県神戸市の生田神社で罰当たりな行為が発生しました。酒に酔った男性が同神社で飼っているアイガモの首根っこをつかんで木に叩きつけたそうです。現場を撮影していた旅行客からの連絡によって行為が発覚し、動物愛護法違反の疑いで現行犯逮捕されたとのこと。

 このニュースを読んで「なんてけしからんことを!」と憤るとともに、「そもそも、どうして神社でアイガモを飼っているんだろう?」と疑問に思いました。生田神社がある神戸市三宮は、同市の中心的な都市で、繁華街として賑わっています。ですが、字面だけでみれば「生(は)」える「田」んぼと書いて「生田」神社。なんとも農業と縁が深そうな名前をしています。

生田神社の本殿

 そしてアイガモは、「アイガモ農法」でもお馴染みであるように、田植え時に害虫駆除をしてくれる鳥です。アイガモが生田神社で飼われているのには、なにか深い理由があるに違いない。そう思った私は、たまたま三宮で私用もあったので、実際に現地に赴いて直接神社の人に聞いてみようと思いました。

「生田の森」を歩く姿に
参拝客たちも注目

 現地に到着(2024年5月19日)してまずはお参り。因果関係がよくわからない不調が長引いているため、健康回復をお祈りしました。朱色の本殿の背後に広がる鎮守の森は「生田の森」と呼ばれ、有名な源平合戦の戦場でもありました。この森の西側に「生田の池」という池が広がっており、アイガモたちはふだん、ここで羽を休ませています。

生田の池。数羽のカモが羽を休めている

 この生田の森を少し散策してみると、なんとカモたちが数羽群がって森のなかをペタペタと歩き回っていました。参拝客の人たちも適度にカモたちと距離を置きながらカメラを向け、その愛くるしい姿を撮影していました。境内でみるカモたちの姿はなんとも神聖な気がしてきて、ますます特別な存在であるかのように思えてきます。

生田の森を歩くカモたち

由来の有無よりたいせつな
「心を和ませてくれる」意義

 神職さんにお尋ねしたところ、とくに由来があるわけではないそうです。対応していただいた神職さんがこの神社に来たときには、すでにカモはいたらしく、「カモたちは観賞用のためではないか」とのこと。確かに、特別な意味がなかったとしても、鎮守の森を歩くカモたちを眺めるだけでも、心が和むような気がします。

 私はとくに信仰心が強いわけでもないのですが、神社やお寺は心を落ち着かせる空間だと感じています。そういった場所で飼われている生き物たちにもまた、乱れがちな心を穏やかにしてくれる力があるように思います。適度な距離感を保って接すれば、きっと幸福な時間をもたらしてくれるのではないでしょうか。

参考文献
 ・「生田神社の飼うアイガモ、虐待した疑いで男逮捕 木にたたきつけたか」朝日新聞 2024年5月17日
 ・島田裕巳(監修)『今こそ行きたい日本の神社200選』宝島社 2022年

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