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「ナガミヒナゲシ」増殖力最強クラスのケシ科植物

「この花なんか増えてない?」
日常を彩るオレンジ色の花弁

 かなり以前から感じていたのですが、とある花を目にする機会が増えました。花びらは6枚くらいで、オレンジ色。草丈は比較的高く、草地にぴょん、と頭を出しているように群生しています。今回はこの身近な「ナガミヒナゲシ(Papaver dubium)」を紹介します。

草地に咲くナガミヒナゲシ

意図せず侵入した
道路沿いに咲く外来種

  ナガミヒナゲシはその名前からもわかる通り、ケシ科に属する植物です。「ケシ」と聞くと麻薬のアヘンの元になる植物だと思う人もいるかもしれませんが、アヘン法によって栽培が禁じられている「セティゲルム種」や「ソムニフェルム種」とは異なる種です。地中海沿岸を原産とする外来種で、道路沿いや荒地などでみられます。

ナガミヒナゲシの花

 可憐でかわいらしい花なので、そのみた目からガーデニング用に持ち込まれたもの、と私は勝手に思っていました。ですが調べてみると、じつは輸入穀物に混じって意図せず日本に入り込んだ植物だと考えられているそうです。

「ナガミ(長実)」の中に
詰まっている1600粒もの種

 1961年に東京都世田谷区で初めて侵入が認められたナガミヒナゲシは、2007年には東北以南のほぼ全土で確認されるほど、急速に分布域を拡大しました。凄まじい増殖力の理由は、1個体が生産する種子の数にあります。

 花後になると、ナガミヒナゲシは「さく果」と呼ばれる実をつけます。この実が長細い形状だから「ナガミ(長実)」ヒナゲシという名前がつけられたとされています。さく果は1個体につき100コほどが実り、さく果内には、約1600粒もの種子が内蔵されているため、1個体で最大15万粒もの種子を生産できます。その種は車のタイヤに付着して運ばれるため、日本各地の道路沿いでみられるようになったようです。

ナガミヒナゲシのさく果とつぼみ

一部市町村では注意喚起も
定かではない毒性の有無

 その実を割って種をみてみようと思ったのですが、「ナガミヒナゲシは触れると被れる」と聞いたことがあり、今回は躊躇われました。一部市町村のHPでも「アルカロイド性の有毒物質を含む」とあり、注意喚起がされています。ですが、私が今回この記事を書くために使用した書籍にはそうした記述はなく、その真意は定かではありません。ふつう危険性のある植物については、どの書籍でもその旨を記載するので、疑問が残ります。

 noteのほかのアカウントさんの記事では、実際ナガミヒナゲシに触れてみて、被れるかどうか試された方もいらっしゃるようです。その結果については、ぜひ引用元の記事をお読みください。

 もし本種に触れて観察してみたいという人は、あくまでも自己責任のもとで判断されてはと思います。私は念のため、おすすめはしないです。

参考文献
・藤井義晴「春に気をつける外来植物:ながみひなげし」農環研ニュースNo.90 2011.3
・岩槻秀明『街でよく見かける雑草や野草がよーくわかる本』秀和システム 2014年
・「県、啓発 違法な大麻やケシ 撲滅」読売新聞2024年4月6日

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