「合鴨肉」鳥肉界No.2でも日本的な家禽
チキンだけじゃない!
寿司ネタにも合う鳥肉
野鳥観察が趣味で鳥好きなわたしですが、じつは食べる方の鳥も好きです。タルタルがたっぷりかかったチキン南蛮、炭火で炙ったこってりとしたタレの焼き鳥、ふんわりとした卵でとじた親子丼。この記事を執筆する数時間前にも、ジューシーなチキングリルをいただきました。
上記に挙げた鳥肉はどれも鶏肉、つまりニワトリの肉ですが、日本国内で食べられている食用鳥はこの鳥だけではありません。今回は日本で2番目に食べられている鳥肉・合鴨肉についてお話しようと思います。この合鴨肉、わたしは某回転ずしチェーン店に行くと毎回注文するネタなのですが、人気のほどはいかほどなのでしょう。肉系のネタながら、クセも少なくてさっぱりと食べられるので、食べたことがない方はぜひ一度食べてみてください。
安定的な供給のワケは
家禽化成功と品種改良
今回あえて「合鴨肉」という名称で紹介していますが、じつは日本で一般的に提供される鴨料理の多くは、この合鴨肉なのです。アイガモとは野鳥であるマガモと、マガモを家禽化したアヒルとを掛け合わせた鳥です。
……この時点で「だったらマガモもアヒルも同じ鳥でしょ? アイガモって結局マガモじゃないの?」と、ちょっと混乱される人もいるでしょう。わたしも正直、未だにちょっと混乱しています。アヒルは海外で品種改良されて生まれた鳥なのですが、そこから日本でどう扱われたのか、そもそもアヒルとマガモとアイガモで何がどう違うのかなど、機会があればまたちゃんと調べて、別の記事で紹介しようと思います。
ともかく、アイガモはマガモ×アヒルの家禽で、肉厚でほどよく脂がのっていることから全国的に広まっていったそうです。とくに「チェリバレー種」と呼ばれる品種は味わいが繊細で、肉量も充分なので流通量が多いことで有名です。カモの肉というと、野生のカモを獲って食べるようなジビエみたいな印象があるかもしれませんが、こうした家禽化と品種改良が進んだことによって安定的な供給が可能となり、比較的身近な食材として鴨肉が楽しめるのです。
合鴨農法のアイガモは
流通に不向きとされる
チェリバレー種は食利用に向いた品種ですが、本種とは別に南九州などで広く利用される「薩摩鴨」など、合鴨農法に適した品種が存在します。合鴨農法は、田植え直後の水田でカモを放し、害虫を食べてもらって殺虫剤を使わずに稲を育てる手法です。そのため、水田で活発に動き回る小型な種が求められることになり、どうしてもチェリバレー種よりも肉量が少なくなり、流通できる食用肉としては適さないものとなります。
現在は合鴨農法用のアイガモのなかでも、とくに体の大きな「薩摩鴨」とチェリバレー種を掛け合わせて、農法用でも流通用としても適する品種を生み出す研究が進められています。稲を育み、食用としても美味しくいただける家禽・アイガモ。その流通量はニワトリに劣るかもしれませんが、じつに日本的な生き物の一種だと感じます。
参考文献
・千葉貴子「国産鶏種の需要と供給に応える」『aff 2016年12月号』 農林水産省 2016年
・髙山耕二、竹本夏美ほか(2018)「水田放飼に適した肉用アイガモの作出」鹿大農学術報告 第68号 P42-51