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「ニホンヒキガエル」突然の来訪者は毒を分泌するらしい
晩秋のとある民家に
出没した大型両生類
夕方すぎに「庭先に大きいカエルがいる!」と言われ、とある民家前まで足を向けました。その周辺には水辺もなく、少し離れた場所に公園があるくらいの住宅地です。そんな場所で大きなカエル? と思って実際に行ってみると、ほんとうに両手では収まらないくらいの大きなカエルがいました。
季節は秋の終わり。もう寒くなる時季なのに、こんなところにカエル? と思って調べてみると、おそらく都市部でも出没するというニホンヒキガエルのようです。本種は西日本では決して珍しいカエルではないそうで、町中にも現れるとのこと。この日は雨の日だったので、とくに動きやすかったのかな、なんて思います。
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皮ふからミルク状の
粘りけある「がま油」
生き物をみつけたら、ついつい手に触れたくなるのが生き物好きの習性ですが、確かヒキガエルには毒があったはず。調べてみると、目の後ろに有毒物質を分泌する場所があるのと、皮ふからミルク状の粘りけのある液体を出すとのこと。このミルク状の液体が、いわゆる「がま油」だそうです。いわゆる「がま」と呼ばれるカエルは、どうやらこの日本ヒキガエルを指すようです。
そもそもカエルの方もあまり触れられたくないだろうな、とも思って、今回はただ写真を撮って、見守るだけにしました。あまりにもじっとその場から動かないので、最後どうなったのかは見届けられませんでしたが、かなり長い間その場所にいました。
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「ゲコッゲコッ」と
鳴かないオスのがま
カエルというと、田んぼや池などで夜間「ゲコッゲコッ」と大合唱する印象があります。ですが、じつはこの「がま」ことニホンヒキガエル、オスは鳴嚢という鳴き声にかかわる器官をもたないため、「クックック」とか細い声で鳴くそうです。
さらにヒキガエルの仲間はぴょんぴょん跳んだりせず、基本的に歩いて移動するそうです。都市部に現れ、「ゲコゲコ」と鳴かず、ぴょんぴょん跳ねずに歩き回る。寒くなる季節は生き物に出会いにくい印象がありますが、変わったカエルに出合えた1日になりました。
参考文献
・松井正文『カエル-水辺の隣人』中公新書 2002年
・奥山風太郎(著)、松橋利光(写真)『山渓ハンディ図鑑9 日本のカエル+サンショウウオ類 増補改訂』山と渓谷社 2015年
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