絶滅の要因に、ヒトによる狩猟が指摘されている生物3種
ヒトもまた捕食圧で
他種に影響を与える
「オオカミがいなくなったから、日本で今シカが増えている」。そういった記述を、書籍などでよく目にします。それだけオオカミの捕食圧が、シカに大きな影響を与えていたと思うのですが、わたしたちヒトもまた、捕食によってほかの生物種に多大な影響を与えていたそうです。
食利用のみならず、ヒトはほかの生物をさまざまな形で利用します。なので、今回は捕食に限定しない、ヒトによる狩猟圧で数を減らしたとされる生物を3種紹介しようと思います。いずれの種も書籍などの資料をもとに調べましたが、もし不備や新しい情報がございましたら、コメントで教えていただけると幸いです。
◯ステラーカイギュウ
1768年に絶滅した、ベーリング海を泳ぐジュゴンの仲間です。同じ海棲哺乳類でも、イルカはシャチは魚を追いかけるので、比較的速く泳げるのですが、ステラーカイギュウはコンブが主食のため、泳ぐ速度は速くありません。のんびりとした動作から狩りやすく、また全長も8mと大型なので、その肉を求めて乱獲されたといわれています。
また、弱った仲間をみつけると集まってくる性質もあったそうで、まとめて狩られることもあったとのこと。2000頭ほどが確認されていたのですが、発見からわずか27年で絶滅したそうです。
◯ナウマンゾウ
日本列島にかつて生息されていたゾウの1種です。約2.6万年前に姿を消したと推定されており、日本国内の各地からその化石が発掘されています。
絶滅した原因として、気候変動による寒冷化やそれに伴う食性の変化などが挙げられていますが、狩猟も要因のひとつに含まれています。化石だけでなく、ナウマンゾウの骨で作られたナイフやナタ状の道具といった骨器も発掘されており、食利用だけでなく道具の素材としても活用されていたことがわかります。
◯ドードー
モーリシャス島にかつて生息していたハトの仲間です。もとはアフリカに生息していた飛翔性のハトだったのが、天敵のいないモーリシャス島に飛来したことで地上性になったとされています。
地上性であるにもかかわらず走ることも苦手で、食肉用に捕まえられたそうです。その捕獲ペースは1日200羽ともされ、乱獲の末1681年に絶滅となりました。
動物を保護するため
培養肉という選択肢
現在、世界の人口増加によって、たんぱく源の不足が懸念されています。たんぱく源といえば植物の種子や昆虫食も含まれますが、やはり肉や魚といったものがメジャーでしょう。現在は家畜や養殖魚で賄われているたんぱく源ですが、枯渇してしまえばその矛先は野生動物に向くのは自然のことでしょう。
イスラエルでは、食料の安全と合わせて動物の保護のために重要であると、培養肉の販売が2024年の1月に承認されました。この培養肉は、ウシの細胞を培養して産み出されたものだそうで、すでに保健所の検査により安全性が確認されたとのこと。
個人的には、ヒトもまた生物種の1種として考えて、「エサ資源が枯渇して個体数が減るのなら、そこでヒトはこの世界に適した数に戻るのでは?」とも思えます。ただ、ほんとうにそのときが来たとして、自分は淘汰されるのか、培養肉を食べてでも生き延びるのか。その分かれ道を考えるのは……いや、あまり考えたくはないですね。
参考文献
・今泉忠明(監修)、丸山貴史(著)、サトウマサノリ、ウエタケヨーコ(絵)『わけあって絶滅しました。』ダイアモンド社 2018年
・「博物館だより 第130号」長野市立博物館 2024年6月28日
・培養牛肉の販売、イスラエルが世界で初めて承認…細胞からステーキ肉作成に成功 読売新聞 2024年1月18日