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「ハッカチョウ」いつの間にか居着いた鳥

ムクドリ? ヒヨドリ? 見慣れない鳥、庭先に
 香川県のとある庭先で、果実を食べる一羽の黒い鳥をみつけました。体の色は黒っぽく、くちばしの根本にリーゼントみたいな毛がふさふさと生えています。こういう場所でよくみかける、ヒヨドリやムクドリとはちがったみた目をしているので、みつけた瞬間「あれ?」と首をかしげました。
 スマートフォンのカメラアプリを起動させて、ゆっくりと近づいてみます。果実をついばんでいた黒い鳥はハッとした様子でいきなり首をあげて、パサパサと飛んでいきました。そのとき、翼に白い模様があったことに気づきました。

柑橘類らしき果実をついばむハッカチョウ
私の接近に気づき飛んで逃げるハッカチョウ

ハッカチョウ、13年で3倍以上
 この鳥はハッカチョウ(Acridotheres Cristatellus)という、本来日本には生息していない外来種の鳥です。ムクドリと近縁の鳥で、おもに中国の中部や南部、ミャンマー、ラオスといった国を原産地とします。今回確認できた香川県以外でも、大阪や和歌山といった関西圏から、東京や神奈川といった関東の方面でも生息が確認されています。
 日本野鳥の会神奈川県支部が実施したカウント調査によると、1993年には130羽程度の記録でしたが、2006年に日本鳥類保護連盟が実施した調査ではなんと486羽にまで跳ね上がりました。13年の間で3倍以上にまでハッカチョウの数が増えた計算になります。

ハッカチョウの剥製(大阪自然史博物館にて催された特別展の展示)

香川県、2010年代も増
 外来種と聞くと、その影響が気になるでしょう。先述の通り、この鳥はムクドリに近縁な鳥類です。そのため、ムクドリの生息環境を脅かす可能性が懸念されてきました。実際に香川県では、ムクドリのねぐらと繁殖場所に侵入し、徐々にムクドリの生活圏を侵食してその数を増やす、といわれています。
 1993年から2007年までの香川県の記録によると、ハッカチョウの分布はこの香川県でも拡大傾向にあるとされています。それ以降の記録は長らく整理されていない状況だったのですが、近年また調査が進められ、2010年代でも香川県内で分布の拡大していると結論づけられました。県内ではこのハッカチョウがふつうにみられる地域もあるので、もしかすると香川県のあちこちでこの鳥がみられるようになるかもしれません。

電線の上で羽を休めるハッカチョウ(香川県内にて撮影)

画面表示よりも自然観察を
 ここまでの文章で、私は「ムクドリ」という鳥の名前を7回書きました。みなさんは「ムクドリ」と聞いて、その姿が思い浮かぶでしょうか。おそらく鳥が好きな人や、日頃から自然に目を向けている人なら、すぐにイメージできると思います。
 ですが、「ムクドリ」という鳥の姿形をGoogle検索しなければわからない人も、少なくないと私は思っています。外を出歩いても、スマートフォンの画面にしか目を向けない人が、ずいぶんと増えたと感じたからです。
 知らないうちに、日本に存在するはずのない鳥が私たちの庭先にいる。その鳥が、もしかしたらとびっきり危険なウイルスを運ぶ鳥かもしれない。その鳥が急激に増えて、たくさんの糞で私たちの庭先を汚すかもしれない。画面表示から少しでも目を離して、自然に目を向けてみる。そうした習慣が生活を守るひとつのきっかけになるかもしれないな、と思いつつ、私はこれからも鳥や自然を何げなく観察しようと思っています。
 ムクドリの写真、あえて掲載はしません。この記事を読んで、もしイメージできなかった人がいれば、ぜひともネットで調べずに外に出て鳥を観察してみてください。くちばしと脚がオレンジ色で、ほっぺが白くて、茶色い鳥です。どこにでもいる、かわいらしい鳥ですよ。

参考文献
・谷岡仁「四国におけるハッカチョウAcridotheres Cristatellusの分布(スズメ目ムクドリ科)」『四国自然史科学研究(13)』2020年
・松永聡美「国内の外来鳥類について」『生活と自然 令和4年7月号』2022年

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