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「ナメクジ」不人気な生き物の増減はいかに

生食で死亡事例も報告
専門家も苦手な陸貝

 先日、カタツムリについての記事を投稿しました。のろのろと進むその姿には関心を抱くのですが、同じ陸貝であるはずのナメクジには関心を抱けないどころか、むしろ苦手意識があります。これは私だけでなく、ナメクジの寄生虫について研究している専門家ですら、「自分もできれば触れたくない」と言っています。その研究者いわく、この感覚は「ナメクジのヌメヌメした体が原因では?」と分析されていて、単にナメクジの寄生虫に臆して抵抗を感じているようではなさそうです。

ナメクジ。散歩中に遭遇

 ナメクジで寄生虫といえば、2018年にナメクジを生食したオーストラリアの男性が、寄生虫疾患である「広東住血線虫症」になって死亡する事例が報告されました。この疾患はネズミに寄生する「広東住血線虫」という線虫が引き起こすもので、発熱や激しい頭痛、顔面や手足のまひなどの症状が出るそうです。

 「広東住血線虫」は宿主であるネズミの糞で排出され、その糞を食べたナメクジやカタツムリにまた寄生します。日本でも広東住血線虫に寄生されたネズミやナメクジが確認されていますが、国内ではナメクジやカタツムリの寄生虫が人に感染したという事例は確認されていないそうです。これらの陸貝を生食しないのは当然のことで、触れた際には手洗いを忘れなければ心配は少なそうです。ただ、こうした死亡報告もまた、ナメクジへの抵抗感に結びついている気もします。

「退治」「撃退」
駆除剤の是非を考えたい

 先日投稿したカタツムリの記事は「都市化によって各地で乾燥化が起き、カタツムリが減少しているのではないか」という内容でまとめました。乾燥に弱いカタツムリは殻にこもることで身を守れますが、常に体がむき出しのナメクジは、カタツムリよりもとくに乾燥への耐性が弱いと考えられます。

カタツムリ。殻にこもって、乾燥に耐える

 ですが、「ナメクジが減少している」と懸念する内容の報告をみつけることができませんでした。私個人の体感としては、雨季にはよく風呂場にナメクジが迷い込んできたのですが、最近はめっきりみなくなりました。数年前にリフォームしたことが要因かもしれませんが、じつは私たちの知らないところで、ひっそりとナメクジが減っているような気もします。

 ナメクジには日本在来の種と外来種がいますが、ある記事では在来のナメクジはみかける機会が減っているそうです。その詳細まではわかりませんでしたが、外来種との競合や環境変化など、思い浮かぶ要因はいくつかあります。とくに気がかりなのは、駆除剤の影響です。ドラッグストアに行くと、「ナメクジ退治」や「ナメクジ撃退」といった文言の製品をみかけます。前述の通り、ナメクジには危険な寄生虫がいる可能性があるのに加え、農作物やガーデニンの食害もあります。対策として薬品に頼るのも必然といえるでしょう。

外来種のチャコウラウナメクジ

 ただ、増減の有無もわからないまま、駆除という選択をしてしまっているのではないか、と少し気がかりです。私個人がナメクジをみかけなくなったからといって、各地で減少しているとは思っていません。ですが、もしかすると生息できる地域が局所化して、その限られた安息の地がたまたま農作物の栽培地で、そこで食害が広まってしまって、駆除の対象になってしまって……こうした想像が単なる杞憂だと安堵できるような報告が、いつかニュースや新聞で知る日が来ると願うばかりです。

参考文献
 ・脇司『カタツムリ・ナメクジの愛し方』ベレ出版 2020年
 ・外来生物 続々編:6 朝日新聞2019年12月4日
 ・国内にも死亡例ありー広東住血線虫症 生野菜への付着で摂取の恐れも 時事メディカル2019年7月21日配信 https://medical.jiji.com/topics/1268


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