「アケビ」あまい果実は口を開け、捕食者を誘う
つるを伸ばして
陽を求める樹木
家から比較的近い場所に、アケビが実っていることを最近になって知りました。アケビはつる性の広葉樹で、暗い林でもつるを伸ばすことで、陽の光を浴びて育つことができます。数年前にはこんなところにアケビをみたことがなかったので、もしかするとここ数年でつるを延伸させ、新しく結実させるようになったのでしょうか。
アケビの実は食べたことがないので、果実をもいで口にしたい気もしますが、2021年9月から因果関係不明の不調を患っている身なので、今回は控えます。ただ、生涯で一度はどこかで食べてみたいとは思っています。
白色で半透明な
ゼリー状の果肉
秋の味覚として知られるアケビですが、その果実はあまく美味だと聞きます。これは捕食者に食べてもらうことで、種子散布を図る植物種の特徴とされています。熟すと身が裂け、なかから白く半透明の、ゼリーのような果肉をみせるアケビ。その一連から「開け実」と呼ばれ、そこから転じて「アケビ」という名称になった、という説も存在します。
おもな捕食者はサル類だとされており、確かにこのアケビを発見した場所で、昔一度だけ、はぐれ猿と思わしき個体をみたことがあります。彼(彼女?)がこの場所で散布した種が芽を出し、新しく結実させたのかもしれません。
歯をすり抜ける
すべりやすい種
さて、よくサルに食べられるというアケビですが、「種まで食べられてしまえば、お腹のなかで消化されてしまうのでは?」という疑問が残ります。じつは、アケビの種はつるつるとすべりやすく、サルの歯をすり抜けてしまうのだそうです。
そうしてサルのお腹に収まることなく口内を出た種は、アリによってさらに遠くへと散布されます。アケビの種には「エライオソーム」という白い付属物があり、これがアリを誘引させるそうです。
果肉自体があまいのならば、サルに食べられずに熟しすぎた果実が地面に落ちたとしても、あまいもの好きなアリが直接その種を運んでくれそうな気もしますが、実際はどうなのでしょう。サルとアリの双方を誘引させる戦略であまい実とすべりやすい種をつくるようになったのか。それとも、もともとアリだけを誘引させるつもりが、いつの間にかサルも実を狙うようになったのか。アケビの口から直接語ってもらいたいところですね。
参考文献
・小南陽亮(監修)、加古川利彦(絵)『子どもと一緒に覚えたい 木の実の名前』マイルスタッフ2021年
・多田多恵子『実とタネ キャラクター図鑑』誠文堂新光社2017年