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「アオダイショウ」大蛇はかつて季節の変わり目を告げていた
散歩中に発見
ヘビのひなたぼっこ
最近一番驚いた生き物との出合いなのですが、私の背丈よりもはるかに長い野生のヘビを発見しました。砂礫に紛れる色柄とつぶらな目。ヘビは体色に個体差があって種の判別が難しいのですが、その大きさとやや青みのある色合いから、おそらくアオダイショウでしょう。この日は日差しがあたたかだったので、ひなたぼっこしている様子でした。
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じつは何度か家の近くでアオダイショウをみたことはあったのですが、距離が遠かったり、少しでも近づくとすぐ茂みへと逃げてしまったりして、間近で観察する機会には恵まれませんでした。唐突な出合いに私は驚きましたが、逆に私の方がこのアオダイショウを驚かせてしまわないよう、気配を消してそっと近づきました。
性格は大人しくても
ネズミなどを捕食
アオダイショウはマムシやヤマカガシのような毒はもっておらず、性格も比較的大人しいとされています。そのため、今回も私の気配を察すると、こちらに攻撃を仕掛けてくることなく、体をくねらせながらするすると逃げてしまいました。
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アオダイショウはおもにネズミなどの小型哺乳類を捕食します。私から逃げる際も速やかな動きだったので、このスピードでネズミたちを追いかけて食べるのでしょう。ヒトの祖先もネズミだったと聞くので、ヘビをみると驚いたり、恐怖心や苦手意識を抱いてしまう人がいるのは、私たちのなかに太古の記憶が刻まれているからかもしれません。
生物季節観測に
含まれていた1種
「そういえばヘビをみる時季は梅雨入り前が多い気がする」と思って調べてみると、気象庁が実施している「生物季節観測」に、かつてアオダイショウも含まれていたそうです。生物季節観測とは、たとえばサクラの開花やウグイスの初鳴きの観測など、季節の変わり目を把握するために、全国の気象台や観候所が実施する生物観測のことです。季節を代表する生き物にアオダイショウも名を連ねていたとは、少し意外に感じました。
具体的に、アオダイショウはいつ頃観測されはじめるのでしょうか。調べようと思いましたが、アオダイショウはすでにこの観測対象から外れているようです。観測回数が減った生き物は観測が廃止されているとのことで、私が入手できた2000年の福井県の資料では、平年5月3日の観測となっていました。アオダイショウは田んぼでも都市部でも比較的どこでもみられるヘビなので、全国的にもこの観測時季に大きな違いはないでしょう。梅雨入り前というよりも、春の中頃から少しずつ観測が増えていく印象でしょうか。
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もしみなさんもアオダイショウをみつけたら、驚きや恐怖心とともに、「ああ、春も中頃かぁ」と季節の移り変わりの早さに思いを馳せてみてください。もっとも、ヘビの判別は決して簡単ではないので、野生のヘビを観察する際はご注意を。
参考文献
・川端宣広(著)『日本の爬虫類・両生類生態図鑑』誠文堂新光社 2018年
・「Re:お答えします 気象庁、どんな生物を調査?」朝日新聞2016年3月24日
・福井地方気象台「福井県の気象概況」2000年
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