「カバ」省エネ型巨大生物が食べる量
豊満な体で俊足
走れば時速40km
動物園でみるカバの、あのむっちりした体つきをみるたびに「ダイエットしなきゃ……」なんて思うのですが、カバは案外足が速いのだとよく耳にします。どれくらい速いのだろうと調べてみると、なんと時速40kmで走れるらしく、安全運転している自動車並の速さだそうです。
もしあの巨体がそんなスピードで襲ってきたら、私だったらすぐ腰を抜かしてしまうでしょう。実際、カバは自分の縄張りに侵入してきたものには容赦ないそうで、ライオンでもワニでも、自分より体の大きなゾウに対しても攻撃を仕掛けるとのこと。アフリカでは毎年300人近くがカバに襲われ、命を落としているというデータもあるらしいです。
食事は1日1食で
40kgの草で満腹
そんな獰猛さもあるカバですが、ほかの生き物を襲って食べることはしない草食動物です。それも野生のカバは基本1日1食の夜ご飯のみで、40kgもの草を何時間もかけてゆっくり食べるのだそうです。
カバの体重は1400〜3200kgで、陸上生物のなかではゾウに次ぐ重さだといわれています。体についている脂肪も5〜12cmと厚いのですが、その体サイズに対して食べる量は案外少ないのです。あれだけ大きな体なのに、どうして食べる量は少なくて済むのでしょうか。その秘密は、日中のカバの生態にあります。
敏感肌を守るため
日中ほぼ水中生活
カバは太陽が出ている間は、基本水中に身を潜めて、太陽光から肌を守っているとのこと。カバの肌は、少し太陽光を浴びただけでもやけどのような状態になってしまうほど、敏感肌なんだそうです。水中にいる時間が長いからこそ、消費するエネルギーが少なくて済むということです。
それだけ長く水中にいるからか、6分もの間潜水できたり、水中で浮きやすいように胸の脂肪がとくに厚くなっていたりするそうです。ちなみにカバはDNAを用いた分析にてクジラに近縁であるとされていて、毛がほとんどないことや、水中で育児をすることなど共通点がみられています。
もしこの先、カバの肌が強くなってより陸上生活に適した進化を遂げたとしたら、食べる量も増えていくのでしょうか。そうしたら、食性も草中心から肉食になることもあり得るかもしれません。自動車並の速度で走る、ヘビー級の捕食者。そんなことを考えながら、動物園での動物観察を楽しんでいます。
参考文献
・今泉忠明(監修)『おもしろい! 進化のふしぎ ざんねんな いきもの事典』高橋書店 2017年
・「この動物に注目! 第5回 カバ」広報さっぽろ 2019年6月号
・「ぼくは動物大使 その44 水陸両用〜カバ」あさひやまどうぶつえんニュース モユク・カムイNO.83 2014年12月31日