カラスの子育ては60日間じっくり派
口のなかが赤いのは
親離れがまだだから
たまにやたら口のなかが赤いカラスをみつけて、そのたびに「なんだか不吉な気が……」なんて思います。死神みたいな真っ黒の体に、鮮血のように赤い口。おぞましさを漂わせる配色ですが、じつは未成熟なカラスの口はやたら目立つ赤色をしているそうです。
未成熟なカラスの口が赤いのは、その目立つ色合いが親鳥の視覚を刺激して、エサを与えたくなるようになるのだとか 。カラスの子育て期間は60日間と、鳥類としては子どもと過ごす時間が長いらしく、パッとみて成鳥にみえてもまだ親からエサをもらっている場合もあるとのこと。これからは口のなかが赤いカラスをみても、ちょっと微笑ましく感じれそうです。
1世代が生涯に産む
卵の数は推定72コ
カラスは都市部でもあちこちにいるので、かなりの数が生息しているように感じられます。実際に1世代が生涯に産む卵の数は72コとされてれており、かなりの数に感じられます。ですが、その卵が孵化して子孫を残すまでを考えると、72コのうちの3%以下に絞られるそうで、70コの卵は子どもを残せず終わるとのこと。
そう考えると、産まれてきたヒナを親鳥が時間をかけて育てるのもわかる気がします。人の生活に馴染み、適応力に長けるような印象があるのですが、カラスは意外と空腹や高温に弱いともいわれているそうです。餓死や病死、さらには人間による補殺と、厳しい世界で生きているのはほかの野鳥と変わりないのかもしれません。
ゆとりある生活から
「遊び」行動が発生
さて、カラスはときに人間の子ども並に「遊んでいる」ような行動をみせます。なにをもって「遊び」の行動とするかは定義が難しいですが、報告されている行動には・電線にぶら下がる、・すべり台をすべる、・シカの毛をくちばしで引き抜くなどが挙げられます。なかには電車のレールに置き石をする、という人間にとって危険を招く行動も確認されています。
なぜ、こうした行動が発生するのかは定かではありません。ですが、彼らの生活に「ゆとり」があるゆえの行動ではないか、とする考え方があります。都市部での生活に適応したカラスは、人間が出したゴミや食べ残しをあさることで、食糧を確保するための時間を短くできます。そうして時間的なゆとりができたカラスが「遊び」の行動を発生させるのではないか、ということです。
真実はカラスのみぞ知る。ただ、もしほんとうにゆとりが「遊び」を生むのだとしたら、それは人間の子育てにも共通するような気がして、カラスという生き物に不思議な親近感が湧いてきそうです。野生動物に人間を重ねてみることはあまりいいことではないかもしれません。ただ、ゴミをあさったり人にちょっかいをかけたりして迷惑に思われるばかりの鳥に、また別の側面があるということは知ってほしいと思っています。
参考文献
・松原始『カラスの教科書』講談社文庫 2017年第10刷
・細川博昭『鳥の脳力を探る』サイエンス・アイ新書 2008年