カマキリは降雪量を予想できるかどうか
じつはゴキブリと近縁種
中生代から存在した昆虫
秋が深まりだすと、カマキリの姿をあちこちで目にします。昆虫のなかでも比較的大型で、鎌刃に似た脚が特徴的なカマキリは、じつはゴキブリに近いグループなのだそうです。活動する時間帯(ゴキブリは夜行性、カマキリは昼行性)や、そのみた目もまったく異なるゴキブリとカマキリですが、内部形態や「卵包(らんぽう)」と呼ばれるカプセル状のものに卵を産む性質などが類似点に挙げられています。
ゴキブリはかなり太古から生きていたとされていますが、カマキリも中生代から存在したといわれています。実際に白亜紀後期の地層で発見された琥珀のなかから、カマキリの化石が発見されているとのこと。となると、カマキリたちには昆虫食の恐竜たちに追われていた歴史が秘められているかもしれません。
食性から信越地方などで
ハイトリムシと呼ばれる
そんなカマキリですが、その鎌に似た脚で小型昆虫類などを捕獲し、エサにします。実際にどんなものを食べているのかというと、トンボ類やミツバチ、アマガエルまで捕食したという記録が残っています(オオカマキリの場合)。
また信越地方の一部では、カマキリを「ハイ(ハエのこと)トリムシ」と呼ぶところもあり、実際にハエやアブを捕食している記録も残っています。昔の人がかつて、カマキリがハエを捕まえて食べる場面を観察して、この呼び名が生まれたのでしょうか。こうした地方特有の呼び方から、カマキリが古くから馴染みの深い昆虫であることとうかがえます。
雪国などで伝わるウワサ
「高所で産卵したら大雪」
さて、そんなカマキリには「高いところで産卵したら、大雪が降る」といった内容のウワサが、雪国などで伝わっています。実際にその信ぴょう性を検証する研究が注目され、1990年代には「実際にカマキリの産卵場所と降雪は関係する」と結論づけられたことがありました。
しかし、その後この研究結果は、基準とする卵包の高さに多くの補正がかけられていたり、そもそも卵は雪に埋まっていたとしても加温により孵化することが明らかであったりと、多くの検証のもと「産卵場所と降雪は必ずしも関係しない」と覆ることとなりました。この伝承は現在、「雪に埋まっていない卵がたまたま目につきやすいだけで生まれた言い伝え」と考えられています。
ただ、これはあくまで人間が現在の科学をもって明らかにしたひとつの結論である、とわたしは思っていて、実際のところはカマキリだけが知っていると考えています。いつかカマキリと意思疎通ができるようになったとき、「きみは大雪を予知できるのかい?」なんて、だれかが尋ねる日が来てほしいですね。
参考文献
・安藤喜一『カマキリに学ぶ』北隆館2021年
・徳川宗賢(2019)「「カマキリ」の方言分布を解釈する -糸魚川・青海方言調査報告7 -」国立国語研究所学術情報リポジトリ P287-302
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