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「エゾリス」チョコ色の獣は林を食べる
道内の街でも観察可能
小型哺乳類の「ニヨゥ」
自然豊かな北海道では、街の緑地に行けば樹の近くでばったりエゾリスに出合うこともあります。エゾリスはキタリスの亜種に分類される小型哺乳類で、日本では北海道にのみ生息しています。木の上に枝で組んだ皿状の巣をつくりますが、巣箱などの人工物も利用してすみかとすることもあるそうです。
木の近くで観察される機会が多いためか、アイヌ語では木渡りを意味する「ニヨゥ」と呼ばれているとのこと。また白色のアルビノ個体は「レタル・ニヨゥ」と呼ばれ、獲物を授けてくれる守り神としてアイヌの人たちから扱われていたそうです。
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かつては毛皮を目的に
乱獲されていた過去も
エゾリスは冬眠をせず1年間活動しますが、春と秋でその毛色は変わるそうです。春にはこげ茶色ですが、冬毛は灰色になり高い保温性を誇る高密度な毛となります。
その上質な毛皮を求めて、エゾリスは一時期狩猟獣として扱われていました。毛皮需要の減少に伴ってその捕獲数も減少し、1994年には狩猟獣から外れましたが、1934年には17万頭もの数が捕獲された歴史もあるそうです。
現代ではトドマツへの
食害も報告されている
先述の通り、エゾリスは樹木との結びつきが深い動物ですが、なんと木の芽を食べることもあるそうです。ある報告によると、ヨーロッパトウヒやトドマツなどの針葉樹の先端に生える新芽を好んで食べるとのこと。そして、こうした樹種は北海道では防風保安林として用いられるため、森林被害として報告に挙げられているようです。
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1個体が1回で食べる新芽の数は100以上になることもあると考えられているそうで、その影響の大きさが示唆されています。半面、それらの被害報告は非常に少なく、冬から春という限定的な期間であることも留意が必要なようです。
春になるまでの時季は厳冬でエサも少なく、どの生物も生存に厳しくなります。人間も風邪が流行る時節になるので、みなさん体調にお気をつけてお過ごしください。
参考文献
・浅利裕伸、柳川久、安藤元一(2014)「日本産樹上性リス類による森林被害」森林野生動物研究会誌39 P11-16
・帯広畜産大学 野生生物保全管理技術養成事業『とかちの野生動物 エゾリス』2020年
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