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【受賞報告】作文を書けない人が優駿エッセイ賞で入賞したよ

親譲りの無鉄砲で子供の頃から損ばかりしているのは坊っちゃんの主人公。
父親譲りの文章力の無さで子供の頃から作文に四苦八苦していたのは私でして。

あ、おなじみの諸々兄姉の皆さま、ごきげんよう。初めましての方、こんにちは。
改めまして、徳田金太郎と申します。


私の作文にまつわる記憶といえば、本を読むのは大好きなのに小学校の夏休みの宿題の定番「読書感想文」はお盆が始まっても書けず、甲子園の決勝が始まる頃、ふてくされながら白紙の原稿用紙をにらみつけるのが毎年の恒例行事。
年上のいとこから「中学生には夏休みの読書感想文が無い」と教えられ、夏休みが来る度に、早く中学生になりたい…… と願って止まない小学生でした。

念願の中学に進学してみれば、確かに「夏休みの読書感想文の宿題」は無かったけれど、なぜか作文教育とマラソンが伝統の地域の中学に入学してしまった残念な子。
国語の授業時間内に作文を仕上げられたためしがなかったし、体育の時間、学校の周囲を走るマラソンコースの横にある自宅裏を通る時は、家に帰りたくて仕方がなかった。
そんな程度のやる気しか無いのに、よくぞ毎年、途中帰宅せずにゴールを切ったものである。エライぞ反抗期の私。


そんな私が、人生で初めて文学賞に応募したのが昨年。「2023優駿エッセイ賞」でした。

↓ 初応募の悪戦苦闘記はこちらに


昨年は一次選考を通過したものの、入賞には至りませんでした。それでも、最終選考の審査員であるプロの作家や編集者が私の文章を読んでくれた、下読みをしたどなたかが作品を最終選考に残してくれたのだと思えば、それだけで心満たされました。
何より、「我流で書いた物が人に伝わった」「誰かの心に残った」という感動が、作文に対する苦手意識を取り去ってくれました。

入賞しなかった作品は日の目を見せてやりたくて、友達が企画したモンゴル女子旅本「わたしたちのモンゴル」に収録し、イベントで販売しました。

2023年夏、初のモンゴル旅行ツアーで知り合った女性同士、それぞれが感じたモンゴルを、豊富な写真、遊牧民ホームステイ、海外ノマドワークルポ、短歌、エッセイなどで表現した1冊の本(ZINE)。
私は2023優駿エッセイ賞の応募&落選作となった、モンゴルでの遊牧民との乗馬経験話をそのまま収録。その他に「モンゴル土産紹介」の記事も書き下ろしました。

本の販売イベントでは、自分が書いたものが本という形あるものとなり、次々と売れる様子に感動しました。
何より、海外旅行好き、馬が好き、モンゴルへ行ったことがあるという人達とのお喋りも楽しく、自主制作本を作った先に、自分たちが表現した物を読んでくれる人とのリアルな出会いがあるという事を知った喜びが爆発した日となりました。


そんな喜びも日々の忙しさに紛れてしまっていた2024年8月のある夜、不意に思い出したのです。
昨年の夏、突然人生初の文学賞応募を締切の2週間前に決意し、熱にうかされたように原稿を書き上げ、締切り数日前に焦って投函した事を……。

初めての応募なのによく完成させて応募できたなぁ~、それが最終選考に残ったなんて。

自分の知識の無さゆえの行動力を思い返し、笑いがこみあげてきます。
すると、芋づる式に気になるのは今年の事。今年の締切りっていつなんだろう?
主催のHPを検索すると、今年の優駿エッセイ賞の募集要項が出ていました。

締切 2024年8月16日(金)必着 ※持込不可


……今日、もう8月13日じゃん。

しかも時計を見ると、まもなく14日に日付が変わろうとしている。

締切は明後日か……。
気付くのが遅かった、今年はもう間に合わない。明日は休みだから目覚ましかけずに寝るぞ。

そんな事を考えて洗面所でぼんやり歯を磨いてると、不意に衝動がこみあげてきました。

うぅぁぁぁぁーーーー!!!!
ダメだ!書きてぇぇぇぇーーーー!!!!
知ってもらいたい馬がいるんだよぉぉぉぉ!!

自分でも理由は分からないけれど、突如として「ある一頭の馬」について書きたい気持ちがあふれて止みません。「書きたい」という気持ちが人生で一番強くわき上がり、それを受け止めきれない自分に戸惑うばかり。

どうした私、もう23時半だぞ?良い子も働く大人も寝る時間だ。

慌てて口をゆすぐと、もう一度主催のHPを確認してみます。何度見ても締切は3日後、というか間もなく日付が変わって2日後になろうとしている。
郵送で応募する事が条件なので、速達かレターパックでの投函デッドラインは締切前日、8月15日午後。しかも私が集中して文章を書ける日は14日だけだ。
書くなら今夜~14日が終わるまでの実質24時間しかない。

書けるのか分からない。構成・アイディア・結末、一頭の馬について取り上げる以外、何一つ決まっていない。間に合うかどうかも分からない。だって去年は応募作を2週間かけて試行錯誤しながら書いたのだ。
それが同じ量の原稿を、今回は24時間で仕上げなければならない。どう計算しても間に合う気がしなかった。

でも書きたい。
あの馬の事を世に知らせたい。
今、書かないと。来年じゃ遅すぎる。

「仕方ない。やるかぁ──」
ハラをくくった私の声が夜の部屋に大きく響いたのは、8月14日午前0時のことでした。


その晩、強制的に自分の過去と向き合い、馬への愛を深く掘り下げ、その他なんだかんだありまして……。

あの馬について知ってもらいたい、私にしか書けない切り口で書きたい、これを手に取ってくれた人に楽しく読んで欲しい。
その気持ちだけを推進力にして書いた原稿用紙10枚分の原稿が完成したのが14日の早朝。仮眠を取った後、昼から原稿を見直すという塩梅。
家の事を全て放棄し、全くダメダメな生活と引き換えに完成した原稿は、しびれるように暑かった8月14日の夜、無事ポストに投函されました。

たった一頭の馬について、熱に浮かされたような衝動で書いた原稿は私の手を離れ、あれよあれよという間に一次選考を通過。この秋、最終選考を経て佳作に入賞しました。

日本で生産されるサラブレッドは年間約7000頭、大きなレースで優勝することなくひっそりと競馬を引退する馬がほとんどの世界。
多くの馬の例に漏れず、静かに競走馬を引退し、第二の人生(馬生)を地道に働いたある馬についてあらん限りの愛をこめ、読み手であるあなたに楽しく読んでもらいたくて書きました。

長い前置きにお付き合いいただきありがとうございました。
作文が書けないという悩みを抱えたまま大人になった私の書いた物が、優駿エッセイ賞・佳作という肩書きを背負い世に放たれてしまった事実に、今さらながら震えています。
ここまで読んで下さったのも何かのご縁ですし、この下の「優駿」のリンクをクリックしてみてください。作文が書けない大人が書いた人生初の入賞作とは一体どんなものか?興味本位で結構です。

文学賞名:2024優駿エッセイ賞
タイトル:油断してはならぬ
ペンネーム:徳田金太郎

これを読んだあなたが、少しでも馬に興味を持ったり、身近な動物に思いを馳せて頂くきっかけになったりする事があれば、私も最高にハッピーです。
そして入賞した各作品もぜひ。特に大賞が書く青春のすがすがしい姿、最高ですよ。
私はこれを読み「若い作者の人生が思うようにひらけますように……」と祈らずにはいられませんでした。こちらもあわせてどうぞ。


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金太郎 | 2/16コミティア・東1-R54a
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