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デジタルマーケティングとは何なのか。

「デジタルマーケティング」という言葉はあまり好きではない。何を指し示しているのかちっとも分からないからである。そもそも、親兄弟や友人知人の類いに話して通じない単語は市民権を得ていない単語なのだから、公然と使用してはいけないのである。

シンプルに「マーケティング」とすれば良いと思うのだが、指し示す内容が単なるデジタル広告の話だったり、サイト流入やコンバージョンの話だけだったりするので、マーケティングと呼ぶにはおこがましかったりして、何となくお茶を濁す感じで「デジタルマーケティング」と呼んだりする人が意外と多い。意外というか実はそういうケースが大半なんじゃないかと思ったりするが、まあそれは大人の事情ということで有耶無耶にしておく。

ある程度真面目に、且つ、簡単に説明しようとすると、「データやテクノロジーを手段として用いたマーケティング」のことである。従来のマーケティングとの相違点は、デジタルであることによる可視化と双方向性にある。ただ、あくまで手段の進化であり、昨今のデジタルマーケティングは手段にばかりこだわり、何のためのマーケティングなのかが蔑ろにされているようにも感じる。

マーケティングを「売れるためにすること」と捉えるならそれでもよいのかも知れないが、本質的には「求めている人と提供する人を結びつけること」であり、求めてもいない人に押しつけたり、必要以上に追いかけたりするのは、ただの押し売りと変わらない。そんなこんなで個人的には「デジタルマーケティング」という言葉は好きではないのである。真っ当にデジタルマーケティングをしている人ももちろんいることは知っている。

ただし、「デジタルマーケティング業界」という言葉の場合、これに代替する言葉を見つけることが難しい。デジタル広告業界では小さすぎるし、Web業界も違う、システムインテグレーション業界でもないし、そもそも「マーケティング業界」という言葉が存在しないのではないか。「○○マーケティング業界」なら存在する。「広告マーケティング業界」「Webマーケティング業界」などなら分かる。

とするなら、「デジタルマーケティング業界」という業界は存在しないのだろうか。しかしながら、具体的に社名で言うと、電通や博報堂などの代理店系、アクセンチュアなどのコンサルティング系、IBMやNRIなどのシステムインテグレーション系、IMJやメンバーズなどのWeb系、および、楽天やアマゾンなどのデジタルチャネルでビジネスを行っている事業会社系などを一括りにして「デジタルマーケティング業界」と言ったりすることが多い。確かにこのあたりの企業が協力し合ったり、敵対したりしながら、ビジネスをしていることは間違いない。

強いて言えば、旧来の広告業界や通信業界、金融業界などのカテゴリを、デジタルというこれまたボンヤリした括りで貫いて、なんかいっちょデジタルで上手いことしてみよう!という勢いを持った集団のことを指すのかも知れない。説明が面倒くさいので「デジタルマーケティング業界」と括れば、とりあえずその業界の住民にとっては居心地がいい。ただし、住民以外にはなんだか分からない。どこにあるのかもよく分からない。何をしているのかも分からない。さらに言うと、なんだかいつも金儲けを企んでいそうなevilな人たちのイメージがある。

そんな住民のひとりとして、この業界をもっとわかりやすくして行きたいと思う。というか業界の分かりやすさはともかくとして、デジタルという現代の魔法の杖を、世の中に寄り添い、生活の質を高めるために使うようにしていきたい。なかなか扱いが難しい杖なんだけど。

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