「ササル」Ringwanderung 歌詞考察
「ササル」の歌詞を素直に読むと、まず浮かんでくるのは別れる寸前の彼氏彼女です。しかし、ただの男女の恋愛物語として読むと、ところどころ意味の通じない、不自然な文章が入り込んでしまいます。
そこで、僕はこの歌詞にはもう一つの物語が含まれているのでは、と考えました。
一番の考察
「君は上の空」「寂しさをただ繰り返す」などから、彼女の気持ちはすっかり冷めきってしまっているのが伺えます。報われないとわかっていても、過去の「ぬくもりの感覚」を忘れられない主人公は、行き場のない感情に悩まされています。
そんな時に限って、彼女は主人公を見つけ出し、誘惑的な表情を見せ、主人公は壊れてしまうのです。…いや、どんな状況だよ。
これを恋愛物語だという前提で読むと、行き場なく悶々と街を彷徨っていると、彼女が偶然主人公を見つけ出して、微笑みかけてくる。何でこんな時だけ僕に優しくするんだ、と主人公は感情が迷子になってしまう。という感じでしょうか。わかるような、わからないような、イマイチ感情移入できない描写だと感じてしまいます。
ここで、もう一つの視点を導入します。
「ササル」はアイドルとオタクの物語である
「ササル」はアイドルとオタクの物語であると考えると、この部分がスッと落ちてきます。今まで特典会で優しくしてくれたのに今は塩対応で、配信のコメント読みもなく、SNSのいいねもつけてくれなくて、でも過去の思い出を忘れられなくて悶々としているところ、ライブで爆レスをもらって思わず叫んで(膝から崩れ落ちて)しまう、という状況です。
皆さんに心当たりがあるかは知りませんが、状況として一瞬で理解して感情移入できると思います。
ライブで爆レスもらったので、懲りずに主人公はチェキ列に並びますが、またしても冷たくあしらわれていまいます。以前は心が通じ合っていたような気がしたのに、今は都合のいい妄想にすがるしかありません。こうやってこの現場も他界してしまうんだろうな、と思いながら会場を後にします。この背中を嘲笑ってくれ、と思いながら。
二番の考察
完全に干されている主人公ですが、それでもまだ他界には踏み切れません。相手にされていない、自分が空回りしているだけとわかっていても、どうにかして推しの理想のファンになろうと、朝になるまで悩み続けます。いっそ他界してしまえば楽なのに、曖昧な立場を続けてしまいます。
ここで主人公は無償の愛に立ち返ります。
レスがもらえなくてもいい、塩対応でもいい、推しのアイドルがそこにいればいいんだ、と。自分は透明人間でもいい、この現場にしがみついてやる、という強い意志で立ち上がります。
Cメロ以降の考察
ここで一気に場面が変わります。
「もしも出会ってなかったら」「泣かない」「どこか遠くへ飛んでって」「忘れ去って」などのワードから、推しのアイドルが卒業してしまう、と推測できます。
今までの上の空、冷たい態度は卒業するか続けているかで悩んでいたからだったのでしょうか。ひょっとしたら、主人公に推し変して欲しくてわざと冷たくしていたのかもしれません。それは彼女にしかわかりません。
思い出も連れ去って卒業してくれ、と思う反面、今まで推し続けてきた感情も思い出も消えていくのは嫌だ、と葛藤します。
ここで一番Aメロとほとんど同じ歌詞が再登場しますが、ここに来るとまた意味が違って聞こえてきます。
上の空なのは卒業するか思い悩んでいたから、というのを主人公はずっと勘付いていたのです。それでも推しが活動を続けてくれる、という夢を見続けてしまったのです。
そんな後悔の中、アイドルは再び爆レスをくれます。主人公の抑えていた涙腺が決壊しました。
確実にやって来る終わりの時。それでもまだ事実を受け入れられない僕を嘲笑って、刺すように見つめて、というところでこの物語は終わります。
終わりに
というわけで、勝手にアイドルとオタクの物語という解釈で読み進めてしまいましたが、いかがだったでしょうか。
同じような経験が無かったとしても、すぐに情景を思い浮かべて、感情移入できるような物語だったと思います。機会があればぜひ、作詞のみょんちゃんに答え合わせをお願いしたいです。
さて、ライブではお決まりのように「ササル」の次に来る曲があるのを皆さんご存知ですね。そう「Last Summer Daydream」です。この曲の作詞もみょんちゃんが担当しています。
そうなると、もしかして、ラスサマはササルの続きの物語なのではないでしょうか…?
そんなところから、次回の考察を進めていきたいと思います!