お盆の名曲 ジルベルト・ジル「Chiclete Com Banana」
熱帯夜に聴きたい音楽シリーズ4
ブラジルの至宝ジルベルト・ジルです。カエターノ・ヴェローゾ、ジョルジ・ベンとともにMPB(ブラジル現代ポップス)を生んだ一人。
2003年からはブラジルの文化大臣まで勤めたという、日本では考えられないキャリアパス。坂本龍一が文化庁長官になるようなもの?
この曲を聴けば、それだけの出世を遂げる理由も分かるというもんです。
MPBのミュージシャンは、良くも悪くも政治に翻弄されています。カエターノ・ヴェローゾもジルベルト・ジルも60年代に成立した軍事政権に目をつけられて、ロンドンに亡命しています。
ボブ・マーリーなんかもそうですが、第三世界のミュージシャンは政治的な立場表明をせざるを得ない人が多いですね。日本のミュージシャンのようには、非政治的な立ち位置が許されていない感じ。
それはともかく、この名曲はポルトガル語なので何歌ってるかよくわからないまま聴いていたんですが、改めて英訳を見てみました。
ビバップビバップ♬ ビバップをサンバに♬
アンクルサム※がタンバリンを叩くとき
※アメリカを擬人化したキャラクター
彼がパンデイロ※を叩くとき
※サンバで使う複雑なタンバリン
彼はサンバがルンバじゃないって知る
俺はマイアミとコパカバーナ※をミックスする
※リオ南部のビーチ
ガムとバナナをミックスする
俺のサンバはそんな風
ビバップビバップ♬ ビバップビバップ♬
俺は大混乱をみたい
これがサンバ・ロック、ブラザー
でも、代わりに
パンデイロとギターのブギ・ウギがみたい
フライパンのなかのアンクル・サムがみたい
ブラジルのバトゥカーダ※のなかで
※サンバのサブスタイル。主にメロディーや歌のない打楽器のみの演奏
特にそんな意味のある事歌ってないですね笑
ブラジルの音楽をアップデートしたいんだって歌でした。
ブラジルって白人もいればアフリカから連れてこられた黒人もいて、さらにはネイティブ・アメリカンもいるような多民族国家。
有名なミュージシャンも当然アメリカのブラック・ミュージックの影響を受けているんですが、その影響の受け方が人によってはっきり違うんですよね。
カエターノ・ヴェローゾは、ボサノバ~ロックって感じで、ソウルとかファンクの影響はそれほど感じさせません。どっちかというとアヴァン・ロック。
ジルベルト・ジルはロック~ソウルの影響をかなり感じます。
ジョルジ・ベンは、ソウル~ファンクの影響をかなり感じます。
みんなアントニオ・カルロス・ジョビンのボサノバ通って来てるはずなんですが、出てくるものは全然違うんですよね。
みんな同じでみんな違う、MPBの不思議な一体感ってのがある気がします。
ジルベルト・ジルのこのアルバムは他にも良い曲入ってるので、おススメです。