サイケデリックってどういうこと? ビートルズのイエロー・サブマリン
サイケデリック・ロックとかサイケデリック・トランスとかサイケ○○ってつく音楽は多いですね。
でも、あんまり共通項がないんですよね。サイケ・ロックというとピンク・フロイドとかエリック・クラプトンのいたクリームとかジミ・ヘンドリクスとか。
ピンク・フロイドはプログレっぽいのを指して「サイケ」と言ってるのかな?と思ったり、クリームとかジミヘンは要するにブルース・ロック?
ドアーズとかグレイトフル・デッドとかになると、じゃなんでアニマルズやイーグルスをサイケって呼ばないのか。
80年代には、サイケデリック・ファーズなんてバンドもいますけど、それもまた全然違うし。比較的最近だとアニマル・コレクティブとか。
ましてサイケデリック・トランスになると、ドンツクドンツク、そこで規則的にシンセがギャーみたいなトラックばっかり。シンセで派手なリフ作ったハードテクノじゃないの?
ケン・キージーの「カッコーの巣の上で」がサイケデリック小説って言われても全然わからん・・・。単にLSDでラリッてましたって話?
ホント捉えどころがないのが、サイケです。
分からない……
「だからサイケって何なんだよ!!」
まぁキレないで。
ご安心下さい。その答えは、やっぱりビートルズにあります。困ったときのビートルズ。イエロー・サブマリンがそれです!
「サイケデリック」という概念をこれほど端的に表したものはありません。
サイケデリックというのは、音楽のジャンルではありません。それは体験のこと。だから、サイケな詞があり、サイケな音楽があり、サイケな映像がある。
だから、別にサイケデリックな音楽でなくても、サイケデリックは成立するんです。
エレナー・リグビーなんて曲自体は、ジョージ・マーティンがオーケストラ指揮して作ったようなもの。ポールによる老人の一生を扱った詞が画期的だったらしい。だけど、そこにはサイケデリックな要素なんて全然見当たりません。
でも、イエロー・サブマリンの映画の中で聴くと、これ以上ないくらいサイケデリックなんです。
多焦点、おかしい遠近感、錯視的な、なんか目が痒くなるけど、今までにないような変な没入感。音楽も含めて。そういったものがサイケデリックなんだと思います。
フランスのハウスDJエティエンヌ・ド・クレシーのヴィデオを見れば、イエロー・サブマリンに通ずるサイケな映像感覚を分かってもらえると思います。これ、音楽はハウスですけど、サイケデリック・トランスのⅤJ的なビデオです。
言ってしまえばサイケデリック・トランスなんてのは、イエローサブマリン的な感覚を極大化したものですよね。
サイケデリック、というのはロックを語るうえで避けて通れないジャンルです。サイケがあったからこそ、それに刺激されて黒人のファンクが出てきましたし、マイルス・デイビスのフリージャズ・ファンクも玉突き式に出てきました。
80年代後半に起きたストーン・ローゼスやプライマル・スクリームみたいなセカンド・サマー・オブ・ラブというUKレイブ・カルチャーもサイケデリック・ムーブメントの一つ。
さらにそこで行われた乱痴気騒ぎに幻滅していったマイノリティがジャングル(ドラムンベース)とか生んでいくのは、60年代後半のファンクが生まれた背景とそっくりだったりします。
いわば、サイケデリックってビッグバンみたいな現象だったんですよね。
ということで、ロックファンを名乗るなら、映画イエロー・サブマリンは絶対一度見ておくべきです!一家に一枚!子々孫々、孫子の代まで伝えるべき永遠の作品です!!
絶対損しない鉄板なので、プレゼントにもオススメです。