顧客起点での事業推進を考えてみた結果、カスタマーサクセス主導のナレッジマネジメントに行き着いた話 Vol.2
企業の課題をカスタマーサクセス起点で滑らかにするSuccess Goal Lab.代表の大竹健斗です。
大企業・ベンチャーでの営業、PM、CS、経営の経験を基に、事業や組織でよくある課題とその解決方法についてnoteで発信しています。
この記事は「顧客起点での事業推進のためのナレッジマネジメントの重要性」と「ナレッジマネジメントの担い手」の2つの内容に分けて作成しております。
Vol.1はこちら
Vol.1では、「顧客起点での事業推進」の実現のためのはナレッジマネジメントの仕組み作りが近道になると解説しました。
Vol.2である本記事では、ナレッジマネジメントをどの部門が主導して進めるべきか?についてを解説していきます。
ナレッジマネジメントが重要なのは当たり前?
Vol.1で「顧客起点の事業推進」のためにはナレッジマネジメントが実現の近道になると説明しましたが、ナレッジマネジメントが重要であることはわざわざ私が説明をしなくても、おそらく誰しもがわかっていることではないかなと思います。
部門単位でみれば、ナレッジマネジメントが既に文化として根付いている部門もあるかと思います。
例えば開発部門では、そもそもドキュメンテーション文化というものが存在しており、ドキュメンテーションスキルがエンジニアに求められる重要なスキルであると考えてられているので、当たり前にナレッジマネジメントを行えているところは多いです。
しかし、Vol.1でも説明しましたが「顧客起点の事業推進」を実現するためには、単一部門だけがナレッジマネジメントを行うのではなく、全社横断的に行えるかが肝となります。
各部門が連携しながら、顧客についての知見を蓄積・共有し、様々な領域に昇華させることが重要です。
そして複数の部門が連携するということは、どの部門が主導して進めるべきか?という点が論点になってきます。
ナレッジマネジメントの担い手
ナレッジマネジメントを全社で実施する際には横ぐし組織を立ち上げることがありますが、実はあまり得策とはいえません。
横ぐし組織は全体の仕組みを作ることはできるかもしれませんが、必ずしも顧客解像度が高いわけではないため、様々な領域へとナレッジを活用する推進力に欠けてしまうことがあります。
結論から申し上げますと、カスタマーサクセスが最適な部門であると考えます。理由としては3つあります。
顧客の一次情報を取得できる唯一の部署であり、顧客解像度が高い
他部門との連携が多く、情報を横断的に共有しやすい
事業フェーズが進めばおのずと自組織の中でナレッジマネジメントが求められる
カスタマーサクセスは契約後のお客様がプロダクトを運用していくフェーズで支援を行うため、顧客の業務フローに基づく具体的な要望や課題をヒアリングできる立場にあり、顧客解像度がどの部門よりも高いといえます。
そして、営業やマーケティング、開発など他部門からナレッジ共有を求められることが日常的に多いです。
例えば、営業は商談の場で提案をする際にはプロダクトの機能だけではなく、実際の顧客の生々しい事例に基づく提案が必要不可欠ですので、受注確度が高まってくると、カスタマーサクセスが営業商談に同席することが多く見られます。
開発が機能改善を進めるにあたっても、開発から実際の顧客のペインや業務フローをカスタマーサクセスにヒアリングすることが多いです。
また、カスタマーサクセス部門は、サービスが成長期を迎えるとともに、業務内容も拡大・複雑化していくため、成功事例の共有や業務の標準化などを進め、業務効率化とサービス品質の平準化を図ることがおのずと求められるようになります。
組織規模が大きくなってくると、プロセス改善や人材育成を専門的に行うCSOpsという部隊を独立させていることも多いですね。
つまりカスタマーサクセス部門は、部門を跨いだコミュニケーション量が豊富であり、情報共有が円滑なのが強みとしてあるので、ナレッジの蓄積・配信を全社横断的に行いやすく、ナレッジマネジメントの推進役としてふさわしいといえます。
期待される効果と具体例
カスタマーサクセス主導によるナレッジマネジメントを推進することで、以下のような効果が期待できます。
顧客起点での製品開発
セールス・マーケティングでの顧客事例活用によるリード獲得・受注率の向上
顧客対応業務の効率化、生産性向上
サービス品質、メンバースキルの平準化
カスタマーサクセス組織のプレゼンスの向上
少しだけ例をご紹介します。
①カスタマーサクセスと営業による顧客向けセールス支援コンテンツの作成
私が以前に所属していたSaaS企業での例ですが、
受注前のお客様がプロダクトを選定する上での必要な情報をFAQとしてコンテンツ化し、お客様自身でFAQから調べて情報をインプットし、適切なプロダクト選定プロセスを踏んでもらい、自社のプロダクトの受注率を高めるといった施策を行っております。
このFAQには、機能情報だけでなく、カスタマーサクセスが普段支援しているお客様の生々しい事例をもとにしたコンテンツをふんだんに盛り込んでおり、お客様と営業との情報ギャップを埋めることで、受注率の向上や受注プロセスの短縮化に繋げることができています。
実際の商談の現場でも、営業マンがこのFAQを使ってその場で検索し、ナレッジをお客様に提案するといった使い方をしており、セールスプロセスの洗練化をすることもできています。
セールスがお客様に伝えたいメッセージと、カスタマーサクセスで蓄積されたナレッジを組み合わせてコンテンツ化することで実現した施策になります。
②カスタマーサクセスによる社内向け新入社員研修
私がご支援している企業様の例ですが、
この企業様ではカスタマーサクセスのオンボーディングプロセスを短縮させるために、受注後のお客様に対して半日でのプロダクト操作研修を実施し、そのうえでカスタマーサクセスが定例MTGの中でオンボーディング支援を行っております。
このプロダクト操作研修はカスタマーサクセスがこれまで実施してきたオンボーディング活動で得られたナレッジの結晶であるわけですが、この研修を応用することによって、社内の新入社員研修もカスタマーサクセスが主導して実施しているのです。
新卒・中途に関わらず新入社員はプロダクト知識だけでなく、ドメインの知識も持ち合わせていないので、カスタマーサクセスが実施する顧客事例に基づく研修は新入社員の立ち上がりを早くするうえでも非常に有効に機能しております。
カスタマーサクセスのナレッジをもとにして、全社の社内オンボーディング促進・スキルの平準化につながっている施策となっております。
ナレッジマネジメントのリソース不足問題
ここまで理想論や期待効果について解説してきましたが、一方で現実的に問題となってくるのは、ナレッジマネジメントにどこまでリソースを割けるか?という点じゃないでしょうか。
カスタマーサクセスが全社横断的なナレッジマネジメントを主導するのに最適な部門であっても、当然他部門と同様に本来の業務である顧客対応業務などに追われているため、なかなかリソースを割くことができないのが実情です。
特にスタートアップやベンチャー規模の企業であれば、カスタマーサクセスがセールスと兼任しているところも少なくないため、なおのことナレッジマネジメントを行うのは難しいです。
CS Opsチームが立ち上がっている企業であれば機能しやすいですが、ある程度の規模の組織にならないと、CS Opsを立ち上げる経営判断にはいきつかないかと思います。
ナレッジの蓄積しっぱなし問題
リソース不足だけでなく、もう一つ問題があります。
それは、ナレッジを蓄積していこうという大号令をかけたはいいものの、単に蓄積がされるだけで、そこから事業開発・サービス改善に有効活用されていないという問題です。
蓄積をするのは当然大事ですが、何よりも大事なのは以下の点です。
蓄積したナレッジをどの領域に活用するかの見極め
活用領域でのアウトプットイメージから逆算したナレッジ蓄積のオペレーション設計
つまり、何のためのナレッジなのかが明確になっていないと、やりっぱなしのままになってしまい、最終的にはナレッジ蓄積自体が形骸化してしまうことが起こりえるのです。
解決策としてのナレッジマネジメント型カスタマーサクセスBPO
そこで、上記のような問題を解消するために、我々はカスタマーサクセスBPOを活用することをご提案させていただいております。
ここ数年で、カスタマーサクセスのBPO活用も当たり前になってきており、実際に弊社でも、多くの企業様にてご支援をさせていただいております。
また、業務オペレーション設計やFAQ作成など特定の業務領域でのプロジェクトベースのカスタマーサクセスBPOでご支援をさせていただく企業も非常に増えてきております。
弊社では、”ナレッジマネジメント型”カスタマーサクセスBPOのサービスを展開しており、顧客対応メインのカスタマーサクセス業務と並行して、業務ナレッジを蓄積し、サービス改善に活用するための設計・実務支援を行うことが可能です。
もし、顧客ナレッジを有効活用できていないなと感じられている場合には弊社まで一度ご相談ください。 お客様に合わせた最適なBPO活用をご提案させていただければと思います。
本記事のまとめと当社のサービスについて
Vol.2の本記事では、ナレッジマネジメントの担い手としてのカスタマーサクセスについて解説しました。
最後に、当社のサービスについて触れておきたいと思います。私たちはカスタマーサクセスを起点とした事業開発・組織開発を行っています。経験に基づく独自フレームワークの提供、個人ではなくプロCSチームの提供、従業員の卒業支援制度を独自の強みとしています。お困りの際は気軽にご連絡ください!
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