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農キャリアトレーナー修了インタビュー 農作業を活用した就労支援の担い手を目指す

田口さん(2022年 農キャリアトレーナー修了)

農キャリアトレーナーに興味を持ったきっかけ

田口と申します。昨年農スクールと出会い、農キャリアトレーナー講座を修了しました。
将来は農作業を活用した就労支援事業所の立ち上げを目指しています。
 
昨年春、大学時代の友人を通じて、農スクールの取り組みを知りました。
その友人は四国の出身なんですが、地元にたくさんある耕作放棄地に関心を持っていて、使われていない土地を福祉的な活動に用いることを考えていました。農福連携について調べていて、農スクールの取り組みをたまたまインターネットで見つけたそうです。よかったら一緒に見学に行かないかと誘われました。
 
私自身、大学で社会福祉について学び、現在はソーシャルワーカーの仕事をしていて、福祉的な活動には関心を持っていました。ただ農福連携という概念は知っていましたが、農業との関わりはこれまで全くありませんでした。
 
友人に誘われるがまま、二人で農スクールの見学に訪れて、代表の小島さんにお会いしました。その時に様々なお話を伺って、農スクールプログラムの担い手となる農キャリアトレーナーに強く興味を持ちました。
これまで私が携わっていた福祉の世界とは異なる、大きな可能性を感じたんです。友人についていっただけなのに、気づいたら私の方が前のめりになっていました。

従来の福祉とは異なる、支援の枠を超えた関係性

私は現在、病院でソーシャルワーカーの仕事をしています。
具体的には、患者さんの入退院の手続きや関係団体との調整などを行っています。特に重要なのが退院後の手続きで、介護保険制度や障害者福祉制度を活用し、自宅で生活できる環境を整える必要があります。
 
ソーシャルワーカーは、入院を機に様々な問題や葛藤を抱えたご本人やご家族にとって最適な着地点を探り、双方の間に入って調整する役割を担っています。
 
農スクールの活動について伺った際、特に印象的だったのが、農キャリアトレーナーと受講生との関係性です。
農スクールは受講生を、福祉的サービスを受ける人ではなく、未来の農業界を支える人材として対等の立場で捉えています。福祉に携わってきた人間として、支援する側、支援される側といった枠を超えた関係性はすごく新鮮に映りました。

農作業を通じて自分自身を知る、農スクール導入編プログラム

農スクールプログラムを見学、トレーナーの役割について学ぶ

この1年間、農キャリアトレーナー育成講座への参加、農スクールプログラムの見学などを通じて、少しずつ農スクールへの理解を深めてきました。
 
農スクールプログラムを見学した際は、農キャリアトレーナーと受講生がどのような関係性を築いているのか、直接目にすることができました。
近くで見てみると、トレーナーの方一人一人が受講生の個性や長所に目を向けているとわかりました。毎回の活動の中で、受講生が成長した所を見出して、目標を後押しする。とても素敵な関係性だと感じました。
 
また、受講生が毎回プログラム後に記入・提出するワークノートも印象的でした。
ワークノートでは、その日どのような農作業をしたのか、それを受けてどう感じたのか、1日の中で必ず振り返りを行います。
誰でもそうですが、日々の業務に追われていると、振り返る事って意外と少ないですよね。その時自分がどう感じたのか記録化することで、自分のことをより深く知って、これから先どう生きていくかを考えるきっかけになると感じました。
 
農スクールについて知るほどに、農キャリアトレーナーとしてこれから活躍したいという思いが強くなりました。

近隣の農家さんを訪問し、農家実習を受ける農スクール基礎編プログラム

自らも野菜づくりを経験して、農作業がもたらす効果を実感

私はこれまで農業経験が全くないので、農業についての基本的な知識を身に付けたいと思い、体験農園コトモファームに入会しました。自分一人で畑の管理ができるか不安だったんですけど、合わなければやめればいいやと思って、思い切って始めてみました。
 
平日は仕事があるので、現在は週末農家みたいな感じで、土日だけ野菜づくりに取り組んでいます。週末畑に来て、無心になって農作業をしていると、呼吸が深まるような感覚があります。
 
自ら野菜づくりを経験することで、自然や農作業がもたらす効果の大きさを知りました。社会の中で様々な生きづらさを感じている方に対しても、農作業を通じて自分と向き合うきっかけを提供することができると確信しました。
 
この1年間で農業の知識も深まりましたが、それ以上に、農業を自分のキャリアにどう繋げていくか考える良い期間になったと思います。
農業と福祉を繋ぐことが、私がやりたいことなんだと再認識することができました。

自らも野菜づくりにチャレンジ

農作業を活用した就労支援の担い手を目指す

小島さんからご縁をいただいて、農キャリアトレーナーとして新しく踏み出すことを決めました。
具体的には、農スクールで提供されている導入編プログラムを活用させていただき、精神に疾患を抱えた方向けの社会復帰支援を行う事業所を立ち上げる計画を進めています。
 
障害福祉サービスに位置付けられている「生活訓練」に重点を置いたサービスで、対象者としては、うつ病や適応障害等、主に精神的な疾患を抱えている方を想定しています。そのなかでも特に、元々はどこかの会社で働いていたけれども、何らかのきっかけでつまずいてしまい、働けない状況に陥ってしまった方に対し、その方が望むゴールを見据えたサポートをしていきたいと考えています。
 
社会復帰を目標にするのであれば、自立に向けて何が足りていないのか。理想と現実のギャップにしっかり向き合うことが必要になるかと思います。
雇用就農に限らず、その方がどこを目指していきたいのか、本人が目指すゴールに向けた土台を共に作るイメージです。
 
就労支援事業所自体は世の中にたくさんありますが、農作業をプログラムに取り入れる点で、他の事業所と大きな差別化になると考えています。
自然に触れて野菜を育てることで、傷ついた心を癒していきながら、本当に自分がやりたいことや、働き方・生き方を見つめ直すきっかけになるような場所を作りたいです。

地域に根差したソーシャルワーカーとして

現在は生活訓練事業所の立ち上げに向けて、同じ志を持った方と一緒に計画を進めています。利用者をこれから増やしていけるよう、農スクールと連携させていただきながら、2025年頃には本格的に軸足を移していく予定です。
 
まずは目の前の事業所立ち上げプロジェクトを前に進めて、軌道に乗せられるよう体制を整えることが現実的な目標です。
また農スクールの理念や、目指している所をより多くの人に知っていただけるよう、少しでも貢献出来たらうれしいです。
 
将来的な目標としては、これまでの経験を活かして、地域に根差した一人のソーシャルワーカーになりたいですね。
生きづらさを抱えたまま、どうしたらいいかわからなくなっている方たちに対して、これまでは既存の制度に則って対応することで精一杯でした。
 
多くの人が抱える生きづらさに対して、その原因となっている社会のシステムを変えていくことが、本来のソーシャルワークの在り方だと思っています。
一人でも多くの方が、自分が望む生き方・働き方を選ぶことができるように、農業を通じて、この先の道筋を作っていけると確信しています。
 
 
(2023年3月30日)

NPО法人農スクールのHPはこちらからご覧になれます。
NPO法人 農スクール | 土が人を育てる畑の学校 (know-school.org)

農キャリアトレーナーについては、こちらのHPで詳しくご紹介しています。
農キャリアトレーナー| 「農業」と「働く」をつなぐ (know-school.org)


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