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2024年春映画

Future is made of virtual insanity
Now always seem to, be governed by this love we have
For useless, twisting, our new technology
Oh, now there is no sound
For we all live underground

Jamiroquai - Virtual Insanity

2024年の春に見た映画をまとめる。


フォロウィング

公開25周年を記念しHDレストア版が上映されたので見てきた。クリストファー・ノーランのデビュー作だが、「ノーラン節」はこの時点でほぼ完成されていたことがわかる。時系列の入れ替え、「盗む」こと、そして「映画制作についての映画」であることは現在に踏襲されている。「人にカメラ/興味を向け、行動や生活を暴いていく」ことは映画撮影そのものであり、その面白さと危うさについて語られている。これがデビュー作なら確かに衝撃的だ。余談だが、主人公の部屋のドアにバットマンのマークが貼られていて、壮大な伏線だと思った(当時は予想すらしていなかっただろう)。

インソムニア

こちらもノーランの初期作品である。他監督作品のリメイクなので「ノーラン節」は薄いが、精神のバランスを欠いていく主人公、(白夜による)時間感覚の欠落、1対1の構図などそれらしき部分はあって、映画として面白かった。大義のために秘密を隠蔽するところは「ダークナイト」、その結果が明かされないのは「インセプション」に近い。

フォーリング・ダウン

ある男が些細なきっかけから暴走し、普段ならスルーできるような「些細な」トラブルに対してブチ切れていく様を描いた作品だ。暴走がエスカレートするにつれて武装がレベルアップしていくのがわらしべ長者っぽくて面白い。同じような境遇の、だが向き合い方が違う刑事とのクロッシングが物語に奥行きを与えている。昔のアメリカについて知識があれば、より理解できたのかもしれない(たぶん、彼の死と彼の退職が”フォーリング・ダウン”を意味しているのだろう)。

関心領域

アカデミー国際長編映画賞を受賞したこと、監督が「Virtual Insanity」「Karma Police」などのMVを監督したジョナサン・グレイザー氏であることから「関心」があった。こういったミーハーな姿勢を批判する……というか、文字通り「無関心」の恐怖がドラマを極力排して淡々と描写されている。
固定されたカメラが日常をただ映しとる形式は、「Virtual Insanity」のMVにも似たものがある。また、優生思想の危険性、「そこにある」のに知らないふりをする危うさについてもVirtual Insanityの歌詞で触れられているともいえる。蛮行、惨劇が映像としては描かれず、「音」で伝わってくる構造はアイディアの勝利といったところだろうか。
「現在」にシーンが移る場面はやられたと思った。ガラス越しに惨劇の記録が展示され、無数の”荷”が焼かれた焼却炉が映るが、そこを清掃する人はいちいち当時の光景に思いを馳せたりはせず淡々と清掃をするだけだ。観光客ではなく、従業員にカメラを向けたのは上手い。そしてまた過去に戻ることで、現在、そしてこの先の未来にも続いていくことを示唆するところといい、終盤は特にテクニカルだったと思う。

アニマトリックス

どこで見られるんだろう…と思ったらU-NEXTにあった。人間とマシンの戦争のきっかけやマトリックスの仕組みなどが説明される「セカンド・ルネッサンス」が見られて良かった(本編でやれよ)。「ディテクティブ・ストーリー」の、「古い人間だからレッド・ピルは飲めない」は価値観が逆転したことをハードボイルドに描いていたと思う(サイファーや「レザレクションズ」の大半の人類など、”現実”を望まない人間はいて、今はその気持ちがわかる)。

リベリオン

「ガン=カタ」は低予算でも迫力あるアクション画面を見せようと生み出されたアイディアらしいが、確かに派手な爆発やカーチェイスがなくても印象的な画面を作り出せていた。後世に影響を与えるのも頷ける。

パルプ・フィクション

ヴィンセントがトイレに行くたびに事件が起こるのは面白かった。やりとりの端々にはウィットを感じられるものの、全体としては乗れなかった(僕とタランティーノ、そして群像劇との相性が良くないのもある)。

ストレイト・ストーリー

「ストレイト」は主人公の名字だが、文字通りまっすぐ・ゴー!な作りだった。パーソナルな問題の解決に対して時間が必要なのはリアリティが感じられた(おそらく、バスや車で送られてすぐ辿り着いてしまったら、あの結末には辿り着けない)。

ロック・ユー!

「ワルキューレロマンツェ」の元ネタと思われる、馬上槍試合「ジョスト」を題材にした映画だ。ワルロマの件と、ヒース・レジャーが主演ということでいつか見たいと思っていた。三次元で、過度な演出はないものの迫力ある一騎打ちが見られて楽しかった。あと、鍛冶屋のケイトが好きだった(自分の技術を試すために男社会に打って出るところ、主人公と男女ではなく仲間として強く信頼し合っているところが)。

バッドボーイズ RIDE OR DIE

アカデミー賞授賞式で起こった騒動から2年、ウィル・スミスの「復帰作」とも言える本作だが、脚本にもそのことが反映されているのか、(もちろん、娯楽作であることは前提として)トキシック・マスキュリニティを強く意識した作品だった。無謀で勇敢なマイクと家父長としての意識が強すぎるマーカスはそれぞれに(2020年代の感覚としては)問題を抱えていたが、本作ではマイクに家族を持たせ、マーカスに臨死体験をさせることで、それぞれの特性を反転させて問題に向き合わせていたように思う。完全に前時代感を抜け出せてはいないものの(そうなってしまったら別のシリーズになるだろう)、ブラッシュアップしていく姿勢が良かった。

Coming Soon…

夏は「フェラーリ」「デッドプール&ウルヴァリン」「フォールガイ」など注目作が多い。「デッドプール&ウルヴァリン」に向けて、前作とロキ シーズン2も見ておきたい。


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