メディア接触の変化
こんにちは。
マーケティング視点で読解力を高めるノートでは、小さくてもファンを増やす仕組みと仕掛けがわかると題し、デジタルネイティブ時代の情報発信を主たるテーマとし、中小企業や個人事業主がオンラインチャネルを活用する際の前提となる、情報接触態様の変化を読み解き、IDやSNS、そして口コミを科学して理解するノートをお届けしてまいります。
1.はじめに
昨年のこと、とある地方の県の産業振興に携わる職員の方からお声がけいただき、地元の食品クラスタ(地元の名産を生産・加工して流通させる)の経営者の方と一緒に、こだわって作った商品を、地元だけではなく、日本全国、あるいは海外も視野に入れてお知らせするとともに、オンラインメディア、特にSNSを通じて自社および商品のブランディングを行うための研究会を運営させていただきました。
中小企業の経営者や、個人事業主が、オンラインメディア、オンラインチャネルの特性を理解し、手に取れるようにした上で、共感を勝ち得るための具体策について、一つ一つ検討し、形作っていくお手伝いをさせて頂く過程で、当方が前提与件として整理した情報や、オリジナルのストーリーを言語化する方法、そして価値を届け、共感を得るための仕掛けづくり、についてまとめたものを、本noteを通じて、お裾分けをさせて頂ければと考えております。
第1章から第7章まで通してお読みいただくことで、デジタルネイティブ世代のスマホ活用事情や、情報接触態様(スタイル)を把握した上で、IDとSNS、口コミについて、手触り感をもって、ご理解いただくことができると思います。
また、2010年代にマスから個へ劇的に変化した情報伝播の構造変化を事業機会(チャンス)とし、中小企業や小規模規模企業、個人事業主による、間違いのないオンラインメディア、チャネルの活用方法をお知らせできれば、幸甚です。
2.スマホとSNSの一般化
まずは、日本のオンライン、デジタル化の状況を見ていきます。日本の携帯電話/スマートフォンの契約者数を確認すると、2019年3月末の携帯電話契約者数は1億7773万件であり、人口対比の普及率では139.8%で、100%を優に超え、一人1台以上が行き渡っている状況です。
続いて、平成30年版情報通信白書の調査結果をもとに、スマートフォンの利用状況を簡単にまとめましたので、ご覧ください。
2017年の世帯における情報通信機器の保有状況をみると、「スマートフォン」の世帯保有率は75.1%となり、はじめて「パソコン」の世帯保有率を上回ったことが紹介されており、インターネットに接続し、情報に触れる、探索するための機器は、ディフォルトがスマホだと考えて良い時代が到来したことがわかります。
その中でも、ソーシャルメディアの利用状況をみると、日本では、LINEの利用率が最も高く、少しでも利用している人を含めた利用者の割合は、およそ60%に。性別・年代を問わず、日常利用する、一般化されたツールだと言って差し支えないレベルに到達しています。
3.主要メディアの接触時間
前項でご紹介したスマホの普及やSNSの日常利用、そして一般化を通じ、日本人のメディア接触状況は、どのように変化していったのでしょうか?また、私は、「情報接触態様」と呼び表しているのですが、「情報取得スタイル」や「選択するメディア」、「目的に応じた手段や使い分け」の動向を確認したいと思います。
総務省が2019年9月に情報通信政策研究所の調査結果として発表した「平成30年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」を基に、旧来型のメディアである「新聞」、4つのマスメディアの中で最も存在感の強い「テレビ」、そして、これからますます活用が一般化する「ネット」の3つを取り上げ、それぞれ「全体(平均)」、比較用として「10代」、「60代」の情報接触態様の違いを理解するため、平均利用時間(平日、1日あたり、分)を簡単にまとめましたので、以下の図表をご覧ください。
こちらの調査によれば、全体平均ではテレビ視聴が約157分、インターネットが112分ほど、新聞は10分前後になりますが、皆さんもおおよそ想像していらっしゃると思うのですが、10代と60代の情報接触態様は、グラフの形からしてまったく異なり、大きな差異が発生していることが一目瞭然だと思います。
テレビ視聴時間は、若年層になればなるほど短く、年代が高まるほど長くなり、60代では毎日4時間以上テレビに接触しています。一方で、ネットは若年層になるほど長く、シニアになるにつれて短くなるという、テレビとまったく逆の傾向があります。
ちなみに、こちらの図表には載せておりませんが、テレビとネットの情報接触時間が逆転するのは30代だということがわかっています。恐らく、30代前半はテレビよりもネットに触れている時間が長くなっています。
このような情報接触態様をひも解いていくと、一つの手段で、マス的に同一の情報を伝えていくことは難しい時代になっていることがわかります。
かって日本では、大みそかには家族でこたつを囲み、紅白歌合戦を見ながら年を越すという時代があり、昭和38年には、歴代最高視聴率81.4%たたき出したことがあったそうです。このような時代は、1つのメディアが発信する情報が等しく大多数に伝わるため、テレビを通じた世帯に対するマスプロモーションの効果が極めて高かったことが、容易に想像できます。
一方、現代の日本は、家族一人一人の「情報取得スタイル」が異なることが分かっています。またスマホを各人が持ち、マルチスクリーン化されているため、「選択するメディア」もSNS、WEB検索、動画視聴といった形で多岐にわたるため、情報伝達を考える場合、一つのメディアやチャネルだけでは、生活者にリーチすることが難しい時代になっています。
今後も、テレビや新聞、ラジオといったマスメディアの影響力は相対的に下がり、特に10代、20代の若年層に対しては、「目的に応じた手段の使い分け」に対応するため、「個」とのコミュニケーションや、「個」に対する告知、「個」への伝達を可能とするメディアや手段を採用し、コミュニケーションプランを設計する必要性が、ますます高まっていくものと思われます。
4.SNSの利用目的
2019年11月現在、国内で3,000万人以上の利用者を抱える代表的なサービスは、Line、Facebook、Twitter、Instagram、だと思います。各サービスの利用者数は、以下のサイトが詳しいので、こちらをご確認ください。
この項では、日本で利用が一般化したSNSの利用目的を見ていきたいと思います。総務省「通信利用動向調査」の調査結果をもとに、ソーシャルサービスの利用目的を、簡単にまとめましたので、以下の図表をご覧ください。
SNSはSocial Networking Service(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の略ですから、言葉通りに読み取れば、ソーシャル(社会的な)ネットワーキング(繋がり)を提供するサービス、という意味を持つため、アンケートの設問にあるような、「もともとの知人」や「同じ趣味・嗜好を持つ人たちとの交流」といったコミュニケーション用途のために普及したものだと考えています。
ただ、調査結果の「ソーシャルネットワーキングサービスの利用目的(個人)」の回答を確認すると、利用者がSNSに対して求めるものが、変容していることが伺い知れます。調査結果の2位に上った回答は、上記の図表のとおり、「知りたいことについて情報を探すため」でした。
また、その他にも、「災害発生時の情報収集・発信のため」というものがあり、それぞれ前年と比べて回答者の割合が増えています。
このような結果から、現在のSNSは、単にコミュニケーションのため、というものから、生活者一人ひとりが、情報を得る、知るという目的を果たすための「情報検索」手段という性格を備えたメディアになっている、という点を読み取ることができそうです。
5.デジタルネイティブ世代
私が、小学生のころ、自宅はまだ黒電話で、電話回線は当然アナログの時代でした。高校生になったとき、はじめてポケットベルが一般化し、クラスの同級生が使い始めたタイミングでした。大学1年のころ、PHSが大学の生協で販売され、学年があがるにつれ、それが携帯電話に変わっていきました。そして、新卒の社会人として入社した年に、NTTドコモのiモードが始まり、電話端末がインターネットに接続することで、コミュニケーションや情報接触態様が、劇的に変化していったことを覚えています。
このような、過去経緯を考えると、私はアナログの世代であり、年を追うごとに進化していく携帯電話やスマートフォンが誕生する度、時代に乗り遅れないように、使い方を習得し、アナログとデジタルの狭間で、いちいち学びながら生きてきたわけです。
一方、ちょうど私の子どもたちの世代はどうでしょうか?物心がついたときには、もしかすると、iPhoneやスマートフォンがあり、インターネットに接続することが当たり前の世代です。彼、彼女らは「デジタルネイティブ」と呼ばれており、情報への接触、取得の仕方、あるいは、コミュニケーションの方法に加え、物事の捉え方、考え方、もっというと、価値観がそれまでの世代と異なっていると言われます。
ここで、デジタルネイティブについて、どのような世代かということを、ひも解いてみたいと思います。以下の図表では、簡単にデジタルネイティブの特徴をまとめていますので、ご覧ください。
デジタルネイティブ世代の成長を年表とともに振り返ると、2019年の現在、彼、彼女らは18歳になる年で、大学受験や専門学校への進学、来春の就職を控えた高校3年生ということになります。
こうして、インターネットのコミュニティやiPhone、各種SNSの誕生時期を見ていくと、物心がつき、何らかの形で情報に触れる際、デジタルネイティブの周囲には、現在のSNSやインターネット接続、検索、動画やゲームや、音楽が、当たり前のように、手のひらの上に存在した、いわば水や空気に近い状態で、デジタル機器やSNSに親しんで、育てって世代だということが分かります。
2019年から先、特にデジタルネイティブの世代に対して情報を届けようとすると、従前のマスを中心とした公に対する発信では、十分なリーチを獲得できないことは明白です。
伝えたいことがあるのに、なかなか伝わらない、伝播していかない、そのようなGAPが生まれるのは、デジタルネイティブ世代に情報を届け、コミュニケーションを図り、チャネルをデザインする、その設計を担う世代が、われわれのようなアナログ世代、あるいはデジタルネイティブとの狭間にいる世代であることも、理由の一つだと思います。
デジタルネイティブの価値観や行動特性が、従前の世代とはまったく異なっているという事実や、その背景事情、2010年代に起きた情報接触態様の変化を、まずは正しく認知、理解することが、ソーシャル時代にあわせたオンラインチャネル、メディアの活用法、仕組みや仕掛けを検討するための早道になると思っています。
第1章(1)メディア接触の変化、はここまでになります。
第1章(2)令和時代の情報検索手法、では、アナログ世代の情報検索とデジタルネイティブの手段の相違、情報取得のパラダイムシフトについて、読み解いてまいりたいと思います。
ここまで、ご一読いただきありがとうございます。マーケティング視点で読解力を高めるノートでまとめた電子書籍のコンテンツも、ご覧いただけたら、幸いです。
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