工夫次第で情報を届けられる時代の到来
こんにちは。
マーケティング視点で読解力を高めるノートでは、小さくてもファンを増やす仕組みと仕掛けがわかると題し、デジタルネイティブ時代の情報発信を主たるテーマとし、中小企業や個人事業主がオンラインチャネルを活用する際の前提となる、情報接触態様の変化を読み解き、IDやSNS、そして口コミを科学して理解するノートをお届けしてまいります。
1.「彼れを知り己れを知れば,百戦殆うからず」
小さくてもファンを増やす仕組みと仕掛けがわかる、デジタルネイティブ時代の情報発信Noteは、第1章~第4章の前半戦を経て、この後、第5章以降の後半戦に入ります。
孔子の有名な言葉に「彼れを知り己れを知れば,百戦殆うからず」というものがあります。本Noteの前半戦では、今後、人口の構成比が増していくデジタルネイティブ世代を主なお客様とし(彼れ)、自社のブランドに対する共感を勝ち得て、商品を手に取ってもらうための方法論や仕組みや仕掛けを考案する(戦う)ために、まず、主たるお客様の価値感や行動特性を含めた情報接触態様(スタイル)を理解する必要があると考え、検討の前提となる与件を読み解き、ご紹介してまいりました。
本Noteの後半戦では、世の中で起きている変化を頭に入れた上で、デジタルネイティブ時代のベストプラクティスを考えてまいります。こだわって作った商品を、地元だけではなく、日本全国、あるいは海外も視野に入れてお知らせするとともに、SNSやオンラインメディアの活用を通じ、自社および商品のブランディングを行うため、一つ一つ、手順を踏み、情報発信、ファンづくり、そしてエンゲージメントを高めるための具体的なプランを皆さんと一緒に考えてまいりたいと思います。
なお、第1章~第4章でご紹介したnoteの内容を一冊にまとめ、kindle版の書籍化いたしました。宜しければ、「デジタルネイティブ時代のマーケティングセオリー:SNSで情報を手繰り寄せる世代の情報接触態様(スタイル)が60分で理解できる」をお手に取っていただけましたら、幸いです。
2.改めて令和の情報伝播(構造)
本項では、第1章~第4章を通じ、ご説明を差し上げたデジタルネイティブ時代の情報発信および、情報伝播の構造を振り返ります。
デジタルネイティブ世代が用いるSNSでは、一人の個人を起点に、複数人のフォロワーがおり、発信された情報を受け取ったフォロワーが共感し、さらに自身のフォロワーへ共有、拡散していくという連鎖構造があるため、幾何級数的に情報量が膨らんでいく、という特徴があります。
ここでは、情報検索手段としてSNSの「#」ハッシュタグを利用し、情報を手繰り寄せるようになったデジタルネイティブ世代の購買行動のプロセスであるASIPSモデルを改めて、ご紹介します。
※ASIPSは、デジタルネイティブ世代の情報接触態様の特徴に基づき、AIDMAやAISASとの相違点を読み解くため、私が整理したもので、一般的なマーケティングの教科書に掲載されている内容ではありませんので、その点、ご承知おきください。
ASIPSモデルの特徴は、「S Sympathy(共感)」にあると思います。自社の商品やブランドに関する「共感」を得られるかどうかによってSNSのネットワーク通じた情報連鎖が始まるか、収束するかが決まってきます。
デジタルネイティブ時代に活用したい情報伝播の構造を、簡単にまとめましたので、以下の図表をご覧ください。
まず、デジタルネイティブ世代が、ASIPSモデルの「A Attention(注意)」
のステップで、私たちが届けたいブランドや商品、サービスに関する何らかの情報に触れた時、その情報を「発信」するか、何事もなかったかのように「スルー」するか、この境目にあるのは、接触した情報に対し、心が動くかどうか、口コミのスイッチが入るか否かであり、一言で表現すると「共感」できる、どうかにあると考えています。
ここで、「共感」を喚起し、勝ち得ることができた場合、共感者による共有が行われ、共感者を介してフォロワーの方へ伝わり、更に共感者が生まれ、情報がネットワーク(連鎖)となり、「S Share&Spread
(共有と拡散)」が繰り返されることで、広く情報が伝播していきます。
自社のブランドや商品について「共感」を喚起することさえできれば、SNS(オンライン)を通じ、極めて低コストで、地理的な制約を超え、価値を伝え届けることができる時代の幕が開けました。このような情報伝播の構造の変化は、中小企業や小規模な個人事業主にとって大きなチャンスだと言えるのではないでしょうか。
3.時代にあわせた顧客理解の必要性
従前のマーケティングセオリーや教科書では、顧客理解の前提となるお客様の分類(セグメント)について解説があり、デモグラフィック(人口統計学的属性)、サイコグラフィック(心理学的属性)、ベヘイビオラル(行動学的属性)といった切り口が紹介されていると思います。
もちろん、現代のマーケティングにおいても、例えば性別、年代、お住まいの地域や職業といった固定的な属性を用いたり、お買い物金額や購入頻度に着目した「RFM分析」により、自社、自店舗の大事なお客様を規定するといったことが行われています。
また、自社のお客様をライフスタイルやこだわりポイント(価値観)別に
分類する、という取り組みも行われています。例えば、食事に対して大事にしていることを取り上げ、「自分簡便(ものへのこだわりは少ないが、欲しい時にはすぐに買いたい)」クラスタ、や「安心安全(食の安全性に関心、産地や原材料を吟味)」クラスタという形で、自社のお客様を分類し、各商品の受容度の違いを、MD(商品の品揃え)に活かす、といった取り組みも見られます。※ご興味がある方は、以下、株式会社インテージと株式会社プレイドの取り組みをご覧ください。
ただ、今後、デジタルネイティブ世代を主たるお客様とし、SNSやオンラインチャネルの情報伝播の構造を事業機会に変え、自社のブランドや商品に関する情報を広く伝播させていこうとした場合、重要なお客様を識別するための物差しは、別に用意する必要がありそうです。
デジタルネイティブ時代の顧客理解に必要な物差し(指標)を整理しましたので、以下の図表をご覧ください。
従前のセグメントに加え、顧客理解のために必要な物差しは、「ファン度(共感度)」や「ファンの人数(共感者数)」ではないでしょうか?
当然、自社のブランドや商品を知ってくださった、という「認知度」や「認知者」の数も、事業の基礎的な数値であることは間違いないのですが、デジタルネイティブ時代の情報の伝播の構造を勘案すれば、自社の商品を知ってもらった先で、「共感してもらう」ことが極めて重要です。
情報に触れた時点では、一人の「情報受信者」だった共感者が、共感し、ファンになり、自分事として、フォロワーに商品やサービス、あるいはブランドの存在を、他者に共有する「情報発信」の起点になってくださるからです。
令和のマーケティングでは、「共感」が「共感」を呼び、ファンが増えていく構図の起点である「ファン度(共感度)」や「ファンの人数(共感者数)」を増やすための仕組み、仕掛け、そして共感を喚起するための工夫の重要度が、ますます高まっていくのではないかと考えています。
4.デジタルネイティブ時代の大事なお客様像
中小企業や小規模事業者は、大手企業と比べ、経営資源が限られるため、地理的な制約を超え、自社のブランドや商品の存在を、広く知らしめようとすると、非常に不利な存在でした。
例えば、大手企業が行っているような、民放のキー局のテレビCMを通じ、3000GRPのリーチを確保しようとすれば、1億円、2億円の費用がかかりますし、新聞に15段の広告を打つことや、全国誌に折り込みチラシを入れる、雑誌広告、ラジオや屋外広告といった従来型マスメディアを利用できる企業は、限られています。
日本の企業数を見ると、約421万企業のうち、99.7%が中小企業、小規模企業であり、圧倒的多数の企業は、体力的な問題から、認知を上げる、ファン度を増やすためにかけられる費用は少額で、活用できるメディアの数と幅の制約は動かしようがありません。
翻って、デジタルネイティブ時代は、主にSNSやオンラインメディアを活用する情報発信の特性や、情報が伝播し、拡散される構造を読み解くと、従前、中小企業、小規模事業者が抱えていた経営資源が乏しい、という問題をクリアできそうです。
デジタルネイティブ世代に対し、商品やブランドのプロモーションやコミュニケーションを図る上で重要なポイントを整理しましたので、以下の図表をご覧ください。
本節でご紹介してきた通り、令和のマーケティング活動で、最も重要なお客様は、「共感してくれたファン」であり、自分事として「口コミとしてシェアしてくださる共有者」だと考えています。
そして、私たちが、この先、考えなければいけないことは、「一人でも共感者を増やす」ということを目標に掲げ、「共感を得て口コミを喚起させるコンテンツ」を生み出し、SNSの情報伝播の構造を活用し、自社のブランドや商品の存在を知らしめていく、という令和時代にあわせた、マーケティングプロセスの実践です。
皆様もご存知の通り、TwitterやInstagram、FacebookといったSNSのアカウントを開設することに掛かる必要は無料ですし、情報発信にかかるコストは、劇的に低下しました。従前のマスメディアと比べ、SNSを通じた情報発信やその先で生れる共感のネットワーク(情報の連鎖)を活用することにかかる
コストは極々小さく、中小企業や小規模事業者も、大企業と同じスタートラインに立つことができます。
この先の未来に向け、重要なお客様は、「共感(ファン)」の先で共有(シェア)」し、「自社に代わってレコメンドしてくださる(スピーカー)」方々であり、共感さえ喚起できれば、SNSやオンラインチャネルを通じて、自社のブランドや商品の価値を広範に届けられる時代が到来しました。
ここで、勝負を別つポイントは、メディアの媒体枠を買い上げる、資金的な体力の大小ではなく、顧客理解を前提として、口コミを喚起する力を備えたコンテンツを作る力であり、その力は、創意工夫で高められる他、実は、大企業に比べ、中小企業や小規模事業者に有利な側面があるのですが、その根拠は、改めて別のnoteでご説明を差し上げたいと思います。
第5章(1)、工夫次第で情報を届けられる時代の到来、として、SNSを通じた情報伝播の構造をご紹介し、この先の未来で大事なお客様像を読み解くとともに、経営資源が限られた中小企業や小規模事業者にとって、ブランドや商品価値を届けやすい時代が到来したことをご案内しました。
第5章(2)、共感を生むコンテンツってどんなもの、として、口コミを喚起する力を持ったコンテンツについて理解を進めるとともに、口コミのスイッチが入りやすく、共感が共有を生むコンテンツの生み出し方について、中小企業や小規模事象者の特性を考慮して、考えてみたいと思います。
マーケティングの視点で見聞きし、読み解き、整理、体系化したこと事を発信しています。発信テーマ別に目次を用意していますので、気になる記事がありましたら、ぜひご覧ください。
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