煩悩ポイント低い食べ物でよろしく
私の父は仏なのですが、仏なので、好むのは煩悩ポイントが低い食べ物です。
例えば、蕎麦屋に行けばざる蕎麦を頼みますし、回転寿司屋に行けば、よくわからん貝のネタを頼みます。もし、天ぷら蕎麦なんかを頼むような日があったとしたら、私たち家族は、その日の父はタイプBの方であることを疑うでしょう。(父は定期的に肉体をメンテナンスに出す必要があるため、3種類ほどのタイプを使い分けているのです。)
「おこそとの」や、「公家」という二つ名を持つ父ですから、根っからの仏で羨ましい限り、私ときたら強欲で、仏のふりをするのに必死です。
まず、コンビニのホットスナックを買うなんてもってのほか、許されて、ファミマのつくね棒か、ハッシュドポテトくらいまででしょう。ピザマン買うやつは恥を知れ!
アイスを買うのにも一苦労。同じモナカアイスと言っても、チョコモナカジャンボの煩悩ポイントの高さと言ったら言うまでもありません。しかも、IQも2と来てる。阿呆になりたいときだけ食べましょう。
仏が選ぶのは、「宇治」と書かれたあんこのやつ一択です。
(※チョコモナカジャンボ一番好きだから許してね)
厳しい仏道修行に耐えきれなくなったとき、免罪符となるのが「かわいい」という言葉です。食べ物を選ぶとき、「かわいい〜」と言いながら手に取れば、それがどんなに煩悩ポイントが高いものであったとしても無条件に赦されるのです。女子がやたらと「かわいい〜」を連発するのはこのためです。女人は禁欲的であることが美徳とされているのですから……(くそ風習再生産ヨッコラショ!!)
さて、ここまで来ましたら、サーモンが女性に大人気である理由がもう分かりますね。サーモンは魚なので、体裁上は煩悩ポイントが低い。しかも、いつも玉ねぎとアボカドと一緒に居るので、ほとんど草です。しかし、実際のサーモンは油含有量が高く、この夏の暑さでは個体の姿を保てないほどでしょう。つまり、「煩悩無いわよ〜ん」という建前を保ちつつ、しっかり欲望を満たせちゃうっつー寸法なんだぜ。君も男なら、彼女に山盛りの唐揚げを食べさせてやったらどうだ、
私もまだまだ未熟者なので、煩悩ポイントを間違えることがよくあります。最近、友人からの指摘により発覚した品目は次の通りです。
まず、ミスタードーナツのオールドファッション。
これは父のお気に入りなので安心しておりましたが、実は食いしん坊の後輩の一番好きなドーナツもまた、オールドファッションでした。彼女いわく、食べごたえがあるそうです。早急にブラックリストに入れ、父をミスドから締め出さなければなりません。
次に、たけのこの里。きのこの山は明るく陽気で、たけのこの里は寡黙というイメージがあったため、以前よりたけのこ派であることを公言し、自分のキャラクターを演出しておりました。しかし、実に10年ぶりにきのこの山を食べてみると、生地がさっぱりとしており、たけのこの里の方は幾分バターの風味を感じるような気もします。理知的で欲のない人間を演出するには、きのこ派を謳ったほうが賢明でしょう。
それにしても、おやつに団子を買える人、うすしお味を選べる人を尊敬します。仏にはなれない、決定的な差がそこでしょう。
私は若さの限り、期間限定のイロモノ味を選んでしまう自分と、無味のガムで満足してみせる強がりとを、翻り続けるのでしょう。