怪機結晶シャドウステークの紹介&感想
こちらはSRC用オリジナルシナリオ「怪機結晶シャドウステーク」の紹介&感想記事です!
染められるな正義に 喰われるな悪に
黄昏の空を独り征く 孤高の蝙蝠となれ
怪機結晶シャドウステーク レビュー
ストーリー ★★★★★
正義にも悪にもなれない蝙蝠野郎の主人公が、毎回死にかけながら藻掻いて足掻いて迷いながら進んでいく。キャラクター同士の立場や敵味方が入れ替わったり、主人公の心がぽっきり折れたりしながら、最後は――間違いなく本作の最大の魅力はストーリーです。ちょっと魅力が書ききれない!
キャラクター★★★★★
作者である砂漠谷氏特有のクセが強すぎるキャラクター達が暴れ回っています。リメイク前には存在すらしていなかったのにやたらと存在感を放ちまくっているあの人や、リメイク前からぶっ飛んでいた性格にさらに磨きがかかったあの人などやべーやつらがいっぱい!
ゲーム性 ★★★☆☆
ストーリーを盛り上げるために、シナリオの間に戦闘が挿入されるタイプのゲームです。戦闘システムもユニークでやり応えがあるのですが、基本的にシナリオを盛り上げるために設計されており、純粋にバトルを楽しんでくれー!といったゲームに比べればゲーム性では一段劣ることは否めません。
グラフィック★★★★☆
SRCシナリオとしては間違いなく最高クラスの画像演出ですが、残念ながらSRC自体が現在(2022年)ではもはや骨董品であるため、どうしても限界があります。それでも、要所要所で表示されるCG等は(サイズが小さいものの)シナリオの盛り上がりに一役買っています。
サウンド ★★★★☆
制作陣が歴戦のSRCシナリオ作者であるため、サウンドの使い方、選曲は見事の一言に尽きます。要所ではなんとキャラクターボイスや本作オリジナルの主題歌も挿入され、否応なしにテンションが上がります。ただし残念ながらSRC自体が骨董品(ry
難易度 ★★★★★★★
SRCの標準戦闘も、SASIシステムによる特殊戦闘も、どちらも手応えのある難易度です……が、それ以上にプレイするまでの難易度が高い。まずSRCが動くPCを用意し、SRC公式から各種パッケージを落として一式インストールできる人が今の時代どれだけいるのでしょうか……。
シャドウステークとは
ざっくり言うと仮面ライダー風SRPGです。
15年以上前に公開されていたフリーゲームのリメイク版で、ジャンルは特撮作品風シミュレーションゲーム、といったところでしょうか。シナリオに同封されているテキストファイルにはこう書かれています。
こういうノリと特撮パロディが好きな人なら絶対ハマれると思いますよ!
あらすじ
近未来、自己補修・自己発展能力を持つ人工義肢「超義体」が広く利用されている時代。とある事件により、世界中の超義体が攻撃的に変異(アーマイズ)してしまう。
人間は、アーマイズした義体使用者を「アーマイザー」と呼び、危険な力を持つ犯罪者予備軍として偏見・迫害するようになり、それに対抗してアーマイザー側も抵抗組織「ジェノサイバー」を結成。
アーマイザーと人間との能力差は大きく、もはや別個の種として両者の対立が深まり続ける中、山奥に秘匿されていた無人施設で、記憶喪失の青年が目を覚ます。
主要キャラクター紹介
遠藤戒吾
本作の主人公である、記憶喪失の青年。何故かやたらと頑丈な体を活かし、用心棒として生活費を稼ぎながら、失った記憶のかすかな断片に残る手がかりを追って旅をしています。
第一話では彼の正体が軍用全身超義体、究極義体003ブラックジャマーであることが判明しますが、それはこの作品のほんのはじまりに過ぎないのです。
天本和美
戒吾と対となる存在です。本作ではアーマイザーは人間に迫害される立場ですが、彼女は自らが信じる正義に従い、アーマイザーでありながら同胞であるアーマイザーと戦っています。人間を守るために。
戒吾は正義にも悪にもなれない「どっちつかずの蝙蝠野郎」ですが、彼女は徹底して「正義」としての立場を貫きます。
その正体は究極義体002ホワイトフルーレ。
相馬氷馬
ジェノサイバーを束ねる人物であり、人間からアーマイザーへの領土割譲を求めてテロ行為を行っています。陳腐な言い方をすれば、悪の組織の首領です。
戒吾とも過去に浅からぬ縁があり、彼のことは気にかけているのですが、自らを「人類の敵」として、徹底的に「悪」であろうとする人物です。
その正体は究極義体009グリーンアロー。
他にもヤバい連中がいっぱい!
シャドウステークの魅力
なんといってもこのゲームの魅力はシナリオ! このゲームはシナリオ特化型です!
戦闘の合間にフレーバーとしてストーリーが語られるタイプのゲームではなく、魅力的なシナリオを活かすために、ストーリーの合間に演出の一つとして戦闘が挿入されるタイプ!
そしてそのメインとなるシナリオは、記憶喪失の主人公が少しずつ過去の記憶を取り戻していきながら、アーマイザーと人類との戦いに巻き込まれていく――というストーリー。
けっこう重めです。人によってはエグいと感じるショッキングなシーンがあるかもしれませんし、主人公がひたすらひどい目に遭います。あと、ぽこぽこ人が死んでいきます。いいですね。
マジでシナリオが良いのよ
砂漠谷氏のシナリオを知っている人ならわかると思うんですが、アレです。砂漠谷節全開です。とにかく先が読めないしキャラクターがどいつもこいつもエキセントリックで活き活きしているし主人公に優しくない。ストーリーが進んでいく毎にどんどんスケールが広がっていき、続きが気になっていきます。
それと主人公が記憶喪失なのが本当に上手くハマっています。リメイク前よりも複雑になった設定を、少しずつプレイヤーに開示、説明していくバランスが絶妙。主人公が記憶喪失であるため「主人公が少しずつ思い出す、あるいは他の人物から説明してもらう」ことで、プレイヤーも少しずつ設定を覚えていけるという……シャドウステークの世界をこういった記事で説明しようと思うと本当に難しいのですが、ゲーム中ではその世界説明が無理なくこなされています。
公式サイトはこちら!
未プレイで興味がある人は公式サイトからダウンロードしてみてね! ここから先はネタバレばっかり、ひたすら私のシャドウステークここすきポイントを語っていく感想だよ!
ネタバレ上等の感想コーナー
ここからはプレイ済の方向け。スクショは無しです。
予想外の展開の数々
こう来るかー! と何度も唸りました。リメイク前から大幅に広がったストーリーには、リメイク前をプレイしていたからこそ衝撃を受けた部分が多かったように思います。
特に、リメイク前は死ななかったキャラクターについては、どうしても今回も無事だろうという先入観があったために、千恵と祐樹の最期には本当に呆然としました。あと衛藤の友人二人(新南と髭戸)もまさかああなるとは……。
俺の知らない究極義体だと!? と叫んでしまいたくなる場面もあり、やたらとボイスに恵まれているジグムンド様に笑ったり、それとまさか最後に宇宙に行くだなんて想像もしていなかったもので……。
さらに言えば、リメイクに際して追加された新設定、モーフィライトがこんなに重要だなんて考えもしていませんでした。
主人公への感情移入
戒吾ちゃんって、ぶっちゃけて言えばずっとふらふらしているどっちつかずの蝙蝠野郎で、あまりゲームの主人公としては共感を得にくいキャラクター類型なのですが、「何に悩み」「何のために」「何を決断したか」がプレイヤーに対して明示されているため、感情移入しやすくなっています。
彼自身の迷いや葛藤が丁寧に描かれていたことはもちろん、周りのキャラクターがとにかく我が強く迷ったりしないやつらが多い(迷ってもすぐふっきれる)ことも、それを後押ししていたのかもしれません。
そして感情移入したところにお出しされるお辛い展開の数々。いやあ最高です……。マジで辛いんですよ黒くて小さいヤツが二体のところ。
そして、だからこそその後、孔陽が本当の意味で味方になるシーンが響くんですよね。スペシャルパワーに友情が入ってるのはズルいって……。
脇役の魅力
とにかくどいつもこいつも何がしたいのかはっきりしていて、端から見るとブレているように見えても、そのキャラクター視点では明確な判断基準が存在している。単なるエキセントリックさだけに留まらない魅力があります。
中でもジグムンド様と待刃郁沙がヤバい。なんなんだろうこいつら。ジグムンド様はもう最後までジグムンド様だし、待刃はお前リメイク前は存在すらしていなかったのに何なんだその存在感は……。
あと脇役と言えば忘れちゃいけないのが名もなきモブのアーマイザー達。オレンジファングの足止めをしたオッサン達と、アーマイザー・レスキューフォースの人達ね。あいつら好きだったなぁ……絶対死ぬだろこいつらって変身した時点で思いましたけど。
SASIはとにかくエネルギーとレーダーの勝負なんだよ!
シャドウステークを語るうえで欠かせない要素ですよね。SASI。正直単純な戦闘システムとしては、月に詠えばの方が楽しいです。ただ、シャドウステークという義体の特性上、やっぱり戦闘システムにレーダー値のような要素は絡める必要があるし、アクセラレイターを使うユニットが複数存在するからには、頻繁に交戦距離が移り変わる戦闘システムにする必要があったこともわかります。
シャドウステークのシナリオを盛り上げるための戦闘、という意味では納得しかありませんが、やっぱりレーダー値の上げ下げが多くなってしまう戦闘はちょっと単調だなぁ、と思ってしまった部分もありました。
カウンターでステーク叩き込む瞬間はマジで気持ちよかったです。はい。
通常戦闘もかなり凝ってますよね
SRCの特殊能力や地形効果、マップ上のギミックを活用できる戦闘はなかなかに歯応えがあって面白かったです! ボーナスを取るのが難しい難易度は、この時代にSRCをプレイしようとする酔狂なプレイヤーもきっと満足したことでしょう!
……つまり初心者向けではないということなのですが。シャドウステークは個人的にめちゃくちゃオススメしたいシナリオなのですが、やはりSRC未経験者にプレイさせるのは辛いよなぁ、と思います。そんな戦闘でした。
後半に進むにつれてガンガン火力がインフレしていくのが「強くなってる」感が出ていてめちゃくちゃ楽しかったです。ケイオススクリームコーラスつええ。
義体使用者の悲哀
本来、人工義肢を使用しなければならない社会的弱者であったはずの義体使用者達は、アーマイズによってある日突然圧倒的な力を手に入れ、強者としての立場を手に入れてしまいます。
強大な力による全能感から無軌道犯罪に走るケースが多発し、それによって世間に偏見が生まれ、善良なアーマイザーに対しても迫害が発生。社会から弾き出された彼らは、生きるために仕方なく犯罪に手を染め、それがさらに偏見と迫害を……。
対抗してジェノサイバーのような組織が結成されますが、そもそも力以前に数が違います。個人単位では圧倒できても、軍隊の前には無力です。本作におけるモブのアーマイザーは、基本的にゴミのように死んでいきます。
それがまあいいんですけどね!(ゲス顔)
くじらちゃんがかわいそうでかわいい。
圧倒的ヒロイン
リメイク前は変なメガネでしかなかった友人ポジションの衛藤くんが、なんかやたらとヒロインっぽくなってます。というかこいつ性別変えたらほんとにそのままヒロインやれるんじゃないでしょうか。
純粋な人間として、最も戒吾に近いところで彼と接するキャラクターなので当然と言えば当然なのですが。あと他の女連中がヒロインとかとてもじゃないけど務まりそうもないくらいクセが強い連中ばっかりですし。
彼と戒吾の会話に出てくる「超義体は人類の夢」「きっと人々を幸せにする」という言葉、非常に印象的でした。かなり象徴的なワードよね。
シャドウステークのかっこよさ
「シャドウステーク」というヒーロー(作中の戒吾は決してヒーローではありませんが、あえてこういう書き方をします)のかっこよさ、魅力が作中ではたっぷり描かれています。
戦闘や必殺技の演出はもちろんですが、ちょっと初リヴァイヴ時の演出がキマりすぎている。金色の変異モーフィライトを演出にこう使うか! という衝撃。いやほんとかっこよすぎますって。
あのシーン、シャドウステークこそが絶望的な状況下において盤面を全部ひっくり返すための切り札であることを、演出だけで強烈に表現しているのがマジで最高でした。
BGMも相まってテンション爆上がりでした。
ジグムンド様
嫌いだけど好き。(笑)
一本芯が通った悪役が好き、という人は多いような気がしますが、この方の場合、ある意味芯が通ってます。「徹頭徹尾自分のため! 俺が良ければそれでいい!」という。
ここまで清々しい糞野郎だといっそ好感が持てます。ドリルにしてるのもまあジグムンド様ならやるよな、という謎の納得がある。無駄にかっこつけてキックしたりビーム撃ったりするのも本当に納得しかない。
初リヴァイヴと14話の連続変身
燃えないわけがないでしょう!
画像や音声の演出も相まって最高でした!
……このへんにしておきますか。
そろそろ6000字を超えてしまったようなので、ひとまずこのあたりで。
またなにか叫びたいことが思いついたら、ツイッターにでも追加の感想を流すかもしれません。
最後に
怪機結晶シャドウステーク、めちゃくちゃ楽しかったです。
遊べて良かった!
この記事ではその魅力や私が感じた面白さを十分の一も伝えられている気がしませんが、久々に熱くなれるシナリオでした!
みんなもやろうぜシャドウステーク! ロザリオーとツキウタもよろしく!