開成・野水校長先生の「さらば東大一直線」発言はどのような変化をもたらすか
開成中学校・高等学校の野水校長先生が「さらば『東大一直線』」の見出しで日経新聞のインタビューにお答えになってました。
WEB記事だけではなく、紙面でも目立つスペースに掲載されたようで、SNSの教育界隈をザワつかせました。今回はこちらのニュースに触れていきたいと思います。
泣く子もだまる国内屈指のエリート校
開成の説明は、、、不要ですよね。知らない方はいらっしゃらないのではないかと思います。
東京のスーパーエリート私立中高一貫校。毎年毎年、東大に多数の合格者を輩出しており、現在、42年連続 東大合格者数ナンバーワンを誇るそうです。とんでもないことです。
そんな超進学校の校長先生が「さらば東大一直線」をぶち上げたということで、いったい全体、これはどうしたものか!?と教育界隈がにわかに騒がしくなりました。
背景にあるのは、最近、ジワジワと広がりつつある海外トップ大学への直接進学です。開成も、グローバル路線に本気を出していかなきゃいけないという意思表明なのかな?と受け止めました。
開成のグローバル路線の歩み
開成がグローバル路線を意識し始めたのは、何もここ最近のことではありません。
ハーバード大学でも教鞭をとった国際派でもいらっしゃる柳沢先生が前校長となったのは2011年のこと。北鎌倉女子学園の学園長になられた今も、様々なメディアで若者の海外挑戦を勧めています。
そして、柳沢先生から野水先生に校長先生が変わったのが2020年。元々、名古屋大学で教鞭を取っていらして、キャリアの後半には、総長補佐として国際交流や留学生の交流を担当、国際教育交流センターの副センター長も歴任されたそうです。留学生交流や国際交流に明るい先生とのことで、いよいよ柳沢前校長先生が作り上げた基盤を一段高め、本腰を入れて海外大学への進路指導を行っていく体制を整えたのか!と当時感じたのを覚えています。
英語教育環境もかなり充実しています。通常授業が終わった後の放課後7・8限目に、希望者を対象に、ネイティブの英語の先生が英語を指導する講座をもっているようです。
そうした恵まれた英語教育環境を備え、今現在、どれぐらいの生徒さんがどれぐらいの英語力をもっているのでしょうか。
海外トップ大学進学に必要な英語力と開成生の実力
海外のトップ大学に直接進学するための英語力の基準は主に2つあります。ひとつは TOEFL。アメリカを中心とした英語力テストです。この TOEFL では100点が1つの基準として考えられています(120点満点)。
もうひとつが IELTS。こちらはイギリス系の英語試験となっており、アメリカ以外の英語圏でよく使われます。IELTS では7.5点が1つの基準になっています(9.0点満点)。
いずれも、英検1級合格を少し上回るくらいの英語力です。
基準となる TOEFL 100点、IELTS 7.5点を超えている生徒の数ですが、数年前の野水校長先生のインタビューでは、高校3年生の時点で「学年に20~30人」とお答えになっていました。
1学年400人の開成において学年20~30人となると、だいたい1割弱。そして先のインタビュー記事では「学年に40人ほど」となっていましたので、高い英語力をもった生徒の数は徐々に増え、ついに学年の1割をとらえたようです。記事の見出しにもなった「海外進学1割視野に」の根拠はここにあるのでしょう。
進学の実際
学年のおよそ1割が海外直接進学のための英語力を有している開成。では、実際にどれぐらいの生徒が海外大学進学をしているのでしょうか。
学校の公式サイトには、ここ10年間の進学実績が載っており、海外大進学者数も公開されています。
ここまでが5名以下が続いた年になります。ここでギアが1段上がったのか、以降、5名以上の年が続きます。
2020年には10名の大台に乗りました。そして、ここから先はやや落ち着きます。コロナの影響も大きかったのではないかと推察します。
緩やかにではありますが、機運は高まり、海外に視野を向けた生徒さんも増えていっているのかなと感じます。
「さらば東大一直線」発言で、今後はどうなる!?
野水校長先生が、海外進学を視野に入れた進路指導に力を入れてきますと新聞社のインタビューにお答えになったということは、今後、開成生の進路はいっぺんに変わってしまうのでしょうか。
答えは「NO」でしょう。
元々、生徒の自主性を重んじる校風の学校です。野水校長先生もインタビューの中で「学校や先生が特定の大学を進める進路指導は一切していない」とおっしゃっています。また、「今現在、東大に進学する生徒が多いのは、たまたま先輩が多いからその影響を受けてるのではないか」というお話もされてます。
今後もそうした方針を貫くとするならば、学校側がけしかけて、生徒の視線を無理やり海外に向けさせようといった指導はなされないはずです。
ただ、影響がまったくないのかというと、それもまた「NO」なのかなと思っています。
校長先生という「学校のリーダー」が強いメッセージを世に打ち出すということは、そのメッセージに共感した受験生が今後集まりやすくなることを意味します。つまり、海外志向の高い生徒がより集まりやすくなるということです。
実は開成、7月にも別のニュースがありました。
それは、インターナショナルスクール出身の児童・生徒にも受験の門戸を開放しますといった内容のものでした。
▼ 応募資格変更のお知らせ(開成中学校・高等学校)
https://kaiseigakuen.jp/wp/wp-content/uploads/2023/07/20230704_applicant-eligibilit.pdf
こうした動きからも、海外に意識が向いている生徒が集まりやすくなる環境は整いつつあると言えます。
1年後、2年後にすぐに変わることはないでしょうが、おそらく数年後には、また1段ギアが上がった進学実績が出てくるのではないかと予想しています。
受験業界全般への影響、そして
同時に、これはきっと開成単体の話ではなく、受験業界全般にも影響を与えるでしょう。というのも、トップ校の方針が変わると、他校もその動きに追随しようとするからです。
開成が方針を変えたとなったらば、その方針変更受け、中堅以下の学校も少しずつ温度感を変えていく。場合によっては、国算理社が試験科目だった中学受験校が新たに英語も課す、 そんな動きを加速させていくのではないかと思っています。
次回にむけて
一口に「海外大学進学」と言っても、そこにあるのは英語力の壁だけではありません。
日本と海外の受験スタイルの違い。年々高騰する海外大学費と厳しさを増す資金調達、、、実に様々なハードルがあります。
次回以降、そのあたりの状況に触れていきたいと思います。
▼ 次回「海外大進学を視野に入れた教育の最大の壁」はこちら▼
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