ユースケースから理解するLOD計算 - 売上比率別の費用按分
LOD計算に悩んでいる全国のTableauユーザーの皆さま、こんにちは!
LOD計算は、理解するにも説明するにも難しいと思います。公式ドキュメントに丁寧に説明がなされていますが、初心者の方は、読めば読むほど分からなくなるジレンマを感じてるかもしれません。
そして、いったい何のためにこの機能があるんだ?といった疑問をお持ちかもしれません。そう、実感が無いと理解は進まないのです。
そこで今回は視点を変えて、こういった場合にLOD計算を使うのだという、ユースケースによる説明を試みてみたいと思います。ただしもちろん、実務上の実感が無いとやはり理解できないです。今回は原価計算系で使う手法ですから、こちらにまったく関わりのない方には厳しい内容と思います。その点はご了承下さい。
ちなみに、こういったビジネスのユースケースから見たTableauの使い方を学ぶ、実務者向けのUdemy講座「Tableau実践トレーニング」を提供しておりますのでご参考下さい。
ユースケース:売上比率別の費用按分・配賦
宣伝広告費という全体にかかる費用を配賦するために売上比率で按分したい。
いきなりクライマックス的なユースケースです。明確なターゲット製品がない限り、費用配賦は全ての売上された製品に行われます。となると、その月の売上全体に対して、任意の単位で売上比率を出す必要があります。今回は最も細かい明細であるオーダーID単位の売上比率によって按分したいとリクエストが来ました。こんな時はLOD計算のFIXEDの出番です。
データの準備
Tableau付属のサンプルスーパーストア.xlsを利用します。
フィールドの準備
以下の計算フィールドを作成して下さい
フィールド名:売上_月Fixed
まずその月の全体の売上を計算式の結果として出せるようにします。例えばこんな計算式です。
{FIXED DATETRUNC('month',[オーダー日]):SUM([売上])}
解説すると、オーダー日の月のみをDATETRUNCで取り出して、月の単位で固定(Fixed)して売上を合計する、といった意味になります。
フィールド名:売上比率byオーダーID
先ほど作成した売上_月Fixedを使い、オーダーID単位で売上比率を計算するための計算式です。なお、今回は明細で計算させるためSUM等の集計関数は使いません。
[売上] / [売上_月Fixed]
フィールド名:宣伝広告費
この月の宣伝広告費が仮に100,000円だった場合の計算式です。売上比率byオーダーIDを掛けることで、オーダーIDごとに100,000円を分割しています。
[売上比率byオーダーID]*100000
ビューの作成
それではビューを作ってそれぞれの値をチェックしましょう。今回は単純な明細表にします。次の図1のようにピルを配置して下さい。またフィルタも図のとおり2021年12月で設定して下さい。チェックしやすくするために総計行は上に表示されるようにしましょう。
結果の数値のチェック
売上_月Fixed
2021年12月の売上を月の単位で集計すると、図2の画像の囲いの中の金額になります。総計と明細行とがすべて同じ金額であることをチェックして下さい。Fixed関数はビューの中のディメンション、この場合はオーダーIDを無視して、Fixed関数中で指定されたディメンション、この場合はオーダー日の月だけを考慮して計算するのでこういう結果になります。
売上
図3の画像の囲いの中は、もともとある売上の金額です。オーダーID単位で計上されていることが分かると思います。そして、総計金額が先ほど入れた売上_月Fixedの金額と一致していることを確認して下さい。
売上比率byオーダーID
各行の売上を、売上_月Fixedで割り算して比率を出します。結果は小数点以下10桁以上の細かい値になりました。図ではパーセント表示にしています。総計が100%になっていることもチェックして下さい。
宣伝広告費
10万円を売上比率で分割した数字です。ビュー上の総計が100,000円であることもチェックして下さい。
以上がユースケースでした。LOD計算を使うことで、厄介な按分と配賦の作業が一気に片付きました。さまざまな応用ができると思いますので参考にしてみて下さい。
Tableauは実務で使うことで効率的に覚えることができると思います。もちろん、それだけではワンパターンになりがちです。そこでテクニックと実務とをうまくミックスしてトレーニングを続けてみて下さい。