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社会課題解決型ビジネスの社内コンセンサスがむずかしい理由(小説) | A社の変化点【前編】

はじめに、
本記事は、社会課題解決型ビジネスにおける社内コンセンサスの難しさを分かりやすくお伝えするために、当社のライターが実際に受託した業務をもとに制作したフィクションです。


新規事業のはじまり

某大手企業のA社で新規事業のプロジェクトリーダーをつとめるB氏は、熱い想いをもって社会課題解決型ビジネスに取り組んでいた。
A社の主業とは異なる分野ながら、同社のコーポレート部門が長年育んできた知見、人材、ノウハウを活用して企画している新規事業だ。一般的に、日本企業とその社員との関係は、雇用者と被雇用者という関係から、社員誰しもが抱える仕事と生活のジレンマにおいて、企業が社員側に寄り添いきれていない社内制度が多方面に存在する。例えば、総合職の転勤に関する制度や、女性の健康に関するサポートなどだ。その企業が社員側のジレンマに寄り添いきれていない社内制度は、「こうするのが一般的だから。他の会社でもそうだから。」と、特に根拠なく決まっている場合も多い。A社の新規事業は、そうした企業側の「当たり前」な概念の一つを、ビジネスの手法でアップデートし、仕事と生活のジレンマに苦しむ社員を解放し、人々の生活をポジティブに変化させようという志をもった事業であった。

B氏は、A社が最近始めた、新規事業アイデア公募制度を活用し、数ある応募アイデアの中から勝ち残った。社会課題解決型ビジネスという特徴と、A社のユニークな特長を上手くとらえたB氏のアイデアに会社も期待し、B氏は経営企画部配属となって、そのアイデアの事業化に業務時間の多くを充てていいこととなった。また、5名ほどの社員が、B氏の新規事業のサポート役として、経営企画部兼務で業務時間の一部をこのプロジェクトに充てていいことにもなっていた。

新規事業の現実

社内の新規事業アイデア公募で勝ち残り、A社で珍しい社会課題解決型ビジネスとして、経営陣も含め社内で大きな注目を浴びてはじまり一年が経過した。
B氏は全力で事業化にむけて取り組んでいたが、なかなかプロジェクトチームとして目立った進捗を社内に示すことができず、社内での評判は悪くなる一方だ。そもそも、社会課題としてとらえていたテーマについて、A社以外の事情を調べれば調べるほど、想定以上に多様な課題と紐づいていることが明らかになってきた。また、A社の持つ知見、ノウハウも、A社の独特な歴史から育まれてきたもので、他の企業へそのまま横展開できそうにないこともわかってきた。
社内での進捗報告では、調査を通じてわかったことを都度発表内容に反映しながら、アイデアのブラッシュアップ過程をきちんと伝えてきたつもりだが、「前と話が違う。」「軸が定まっていない。」「本当に事業化できるのか。」と、そのアップデートを否定的にみる意見がどんどん高まっていた。
調査を通じてB氏の脳裏には理想の社会像が次々と形を変えて浮かび上がり、情熱は高まる一方だった。

B氏は常に考え、チームに伝え、自らが率先して行動してきたが、徐々に5名のプロジェクトチームメンバーの情熱が低下してきていること、チームとして思ったような成果がでないことに苦しんでいた。経営陣からは「お前を遊ばせるために経営企画部配属にしたんじゃないんだぞ」という、冷たい視線も見え隠れする。B氏は自らの使命感の高まりと、チームの温度の低下とのギャップ、周囲の失望感に苦しみ、「A社のなかでこの取り組みを続けるべきだろうか。いっそのこと独立して挑戦すべきなのではないか。」という想いも去来しはじめている。2024年も後わずか。2025年は続けられるだろうか?いや、そもそも続けるべきなのだろうか?

コンサルタントのアサイン

その日、はじめて外部から社会的インパクトのコンサルタントとして呼ばれた紺野(トークンエクスプレス)は、プロジェクトリーダーB氏の社会課題解決型ビジネスにかける熱い想いを聞いた。その後、チームメンバー5名を紹介され、それぞれの担当と雑談を交えながら現状のヒアリングを行った。その中で、紺野は一つの違和感を覚えながら、彼らの話に耳を傾けた。

彼らが話す、このビジネスが解決しようとしている社会課題の見方がメンバーの各々でズレている。
それは例えば、「赤いリンゴ」の話をしているけど、人によってはシャキシャキだったり、サクサクだったり、あまかったり、酸っぱかったりと「違う赤いリンゴ」の話をしているようだ。皆、同じ赤いリンゴについて話しているはずなのに。


後編につづく

チームメンバーの中で、解決しようとしている社会課題の認識に違和感を覚えた紺野は、社会課題を整理し定義することから着手した。その結果、チームにどのような変化が生まれたのか。


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