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社会課題解決型ビジネスの開発にアサインされたら、はじめに考えること
社会課題解決型ビジネスを新規事業や事業開発のテーマとして取り組む企業は年々増加の一途をたどっています。それと合わせて、社会課題解決型ビジネスの開発にアサインされた企業の方々からのご相談も増えるわけですが、それらの内容は不思議と共通しています。ビジネスにおける立場や進行状況もさまざまな方々なのに、整理すると大きく3つの相談に整理されるのです。
この記事をご覧くださっている皆さんも、どれか、またはその組み合わせでつまづいていらしたりはしないでしょうか?
もしこれらに該当しない相談があれば、ぜひお聞かせください!
お待ちしています。
1.社会課題解決型ビジネスの開発でよくある相談
社会課題解決型ビジネスにおける相談は、大きく3つの以下の相談に整理されます。
社会課題を扱うことの難しさ
同じ用語・単語でも人によって解釈が大きく異なるほど、幅が広い
マクロの社会課題を採り上げると「総花的」、ミクロの生活者課題にフォーカスすると事業スケールが「こじんまり」
社会課題のボトルネックの探索と解決策が見つからない
社会課題解決の目標設定と評価の仕方がわからない
社会課題解決とマネタイズの両立の難しさ
自分が解決すべきと考える社会課題は、取り組んでも儲からないから事業化されていない(と思う)
社会課題解決の方策の検討を、事業化の過程でいつ、どのように取り扱うべきかわからない
社会的な価値創出と事業の財務的な価値創出の両立が見込める領域を選定することが難しい
参考になる事例の見いだしづらさ
社会課題は多岐にわたるなかで、検討中の内容に照らして参照できる事例をみつけられない
こうして整理してみると、社会課題解決型ビジネスの開発に着手する前にはじめに考えておくべきことが考え切れていないことが、多くのお悩みの根っこにあるのだろうと感じます。そしてそれらは、関係者間で押さえておくべきこととして認識・共有されていないことが多いのです。
2.はじめに考えること
上記のようなお悩みをお寄せくださる方に、試しに以下の4つの質問を投げかけてみると、大手企業や中小企業に関係なく、ほとんどの方が明確な回答をお持ちではありません。
社会課題とは何か
社会課題を解決する、とはどういうことか
ビジネスである以上、最低限担保しなければならないことは何か
なぜ(普通のビジネスではなく)社会課題解決型ビジネスを志すのか
例えば、1つ目の「社会課題とは何か」という問いは、社会学の構築主義という理論的立場から研究が積み上げられてきているほど奥深いものですが、意外と多くの方々が「え、そんなこと考えたこともなかった。」というリアクションをお返しくださいます。
改めてチームメンバーに問いかけてみると、驚くほど多様に社会課題というものに対するイメージが出てくることでしょう。そして、2つ目の解決するとは?という問い、3つ目のビジネスとして最低限担保しなければならないことについても、多様な回答が返ってきます。社会課題解決型ビジネスは、その始まりから、関係者の認識のズレがあるのです。
2025年を迎えたこのタイミングで、チーム内での見解を統一しておきましょう。
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3.なぜ社会課題解決型ビジネスを志すのか
今回の記事では、4つ目の「なぜ(普通のビジネスではなく)社会課題解決型ビジネスを志すのか」という問いにフォーカスしてみます。
なぜなら、その答えに向かって深掘りをしていくことで、前述のすべてのご相談における解決のヒントが見出せてくるからです。
社会課題解決型ビジネスを志した理由は、企業や担当者によって様々あると思いますが、少なくとも、社会課題解決型ビジネスを志すことで達したい目的があるからこそ、あえて社会課題解決型ビジネスに挑戦しているはずです。そうでなければ、一般的なビジネスを立ち上げるだけでも簡単なことではないのに、わざわざ社会課題の解決という、もう一段上の負荷をかけることは合理的ではありません。
実際に、これまで私たちが聴いてきた社会課題解決型ビジネスを志している理由の例を挙げてみましょう。
社会の課題の解決への貢献を謳う企業ビジョンに忠実であろうとすれば、新規ビジネスの起ち上げにおいて社会課題解決の視点は必須
▶ 株主、取引先、社員などのステークホルダーの共感・協力を得られるビジネスにする必要がある社会インフラを提供する企業として、社会の公器として、新規ビジネスの検討において社会課題の解決という視点は、社外との関係でも社内の説得においても欠かせない
▶ 行政、株主、取引先、社員などのステークホルダーの共感・協力を得られるビジネスにする必要があるスケールがあって大きな価値を提供するサービスを検討する際に、行政や金融機関等の巻き込みも見すえ、社会課題の解決という切り口から検討したい
▶ 行政、金融機関などのステークホルダーの共感・協力を得られるビジネスにする必要があるBtoBビジネスに取り組んできたが、BtoBに限らないビジネスモデルを模索したいと考えている。無限の可能性があるが、検討の端緒として社会課題の解決という切り口を設けたい
▶ 新たなビジネスモデルに挑戦する際のパートナー企業の共感・協力を得られるビジネスにする必要がある共創型で他社とともにビジネス創出をしたいため、他社を糾合するためにも社会にもたらす価値を打ち出したい
▶ 共創パートナー企業の共感・協力を得られるビジネスにする必要がある
上記の例は、一見多様な理由が存在するように見えますが、その裏側にある期待や目的をよくよく問うてみると、大きくグロースする、スケールするビジネスを構築したいという想いがあり、その達成のために、“▶”以下に補足したように、ビジネスの起ち上げ期や成長期においてキーとなる重要ステークホルダー(関係者)の共感・協力を得られる事業コンセプトを持ちたいという、期待や目的を内包しています。
この「重要ステークホルダーの共感・協力を得つつ、大きくグロースするビジネスを構築する」という、社会課題解決型ビジネスを志す根っこにある目的は、意外にも社会課題解決型ビジネスに取り組んでいく過程で忘れられがちです。多くの方々は、近視眼的な収益化にのみにマインドシェアを奪われてしまいます。
しかし、せっかく社会課題解決型ビジネスという、少し負荷の高い取り組みに挑戦しているからには、ビジネス設計の初期段階から
“ 重要ステークホルダーとしてどのような主体を想定してビジネスの起ち上げ・成長にしっかりと巻き込んでいくか ”
を意識的に考慮し、事業開発に反映していく必要があります。
いかに近視眼的な事業の収益化のみに視野をふさがれずに、事業開発の初期段階から「大きくグロースするための重要ステークホルダーの巻き込み」を事業設計に盛り込んでいくか。
社会課題解決型ビジネス創出、社会的インパクトの測定・マネジメントの専門家として、私はこの問いに向き合い続けてきました。
そのなかで開発したのが、「インパクト・グロース・キャンバス」です。
4.社会課題解決型ビジネスの全体像を1ペーパーで可視化する
このインパクト・グロース・キャンバス(以下「IGC」と表記)は、社会的なインパクトをもち、大きくグロースする社会課題解決型ビジネスの創出を支援するためのフレームワークです。
社会的インパクトをもつ社会課題解決型ビジネスにおいて明確化すべき10の要素を構造化し、1枚のシートに視覚的に表現します。
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IGCを利用することで、社会課題解決型ビジネスの開発において常に意識すべき全体像を簡潔かつ効果的に把握し、共有することができ、事業を効率的に開発することができます。
インパクト・グロース・キャンバス活用の利点例
ビジネスの社会的インパクト創出側面の全体像の可視化
効率的なコミュニケーションと共通認識の形成
迅速な仮説検証と改善サイクル(PDCAサイクル)
上記の利点の結果、社会課題解決型ビジネスに取り組む方が陥りがちな、近視眼的な収益化への没入が防がれ、常に立ち戻ることができる事業開発の基盤を獲得することができます。
IGCを使ってビジネスの社会的インパクト側面を検討する際には、事業の重要ステークホルダーや受益者が誰かといった事業ビジョンなど、10個の項目を明確にする必要がありますが、ただ単に空欄を埋めればいいわけではなく、10個の要素が相互に関連付けられ、シート全体で合理的なものにする必要があります。
はじめは一通り埋めてみるのもいいですが、その後に開発チームメンバーと時間をかけて何度も見直し、可能な限りの関係者の意見も聞きながら薄ハケで塗り重ねるようにアップデートしていくことをお勧めします。
納得のいくIGCを作ることができたら、ここから事業のビジネスプランと整合させていきましょう。
このように、事業の構想の初期段階からIGCを活用していくことで、「大きくグロースするための重要ステークホルダーの巻き込み」という、社会課題解決型ビジネスの大きなメリットを獲得していけるビジネスの実現が開けてくることでしょう。
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5.社会課題解決型ビジネスの成功理由
ついつい「自社にとって最適な社会課題解決型ビジネスとは何だ??」と狭い視野になりがちですが、成功している社会課題解決型ビジネスに学ぶことは一番の近道かもしれません。
そこで、よくご提案するのは、その成功している社会課題解決型ビジネスをICGにあてはめてみることです。すると、驚くほど簡単に整理(分解)できてしまい、「よくできている」ことに気づくことができるでしょう。
上手くいくも、いかないも、そこにはちゃんと理由があります。私たちはそこを的確に見つけ、改善し、成功に導くプロフェッショナルです。
2025年、多くの社会課題解決型ビジネスを目指す企業が、このICGを活用いただき、多くの社会課題が解決すること、ビジネスが成長することの両立に少しでも寄与できればと考えています。
もし、お手伝いが必要であれば、お声がけください。
今年も皆様にとって、良き一年となりますように。