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君はこじらせているんじゃなくて純粋なだけ。

私の好きな人は、自分を「こじらせている」と評価する。
光より陰、中心より端っこ。社会の中で権力を握るリア充達とは隔離された場所に、ポツリと佇む人間。彼は自分自身で、決めつけという呪いをかけていることに気が付かない。

私からすれば、彼はこじらせているというより純粋だ。
恋愛に冷めていると言いつつ、別れ際のキスを喜ぶ。「別れるのにエネルギーを使うので、もう別れたくない」と、ともすればプロポーズのような発言をする。

現代は複雑だ。ちょっとずる賢い人、器用な人でないと生きるのに苦労してしまう。
正直者が馬鹿を見る時代だと思う。だから、純粋な人ほど自分を「不正解」だとか「外れもの」だと勘違いする。彼もきっとその1人なのだろう。

彼の結婚観について話を聞いたことがある。旅行先、移動の車中で彼は突然語り始めた。周りに幸せな結婚をしたケースが無いため、結婚に良いイメージがないそうだ。その時ちょうど車内では、映画のサントラが流れていた。恋の始まりを予感させる、私が大好きな曲。「この曲ちゃんと聴きたかったのに」、とか、それ以上に「私と結婚する気がないってこと?」とか、一気にモヤモヤした気持ちが襲ってきた。今思えば、彼なりの自己開示なのだと思う。単純に「自分はこういう結婚観を持っています」という自己紹介だったのだろう。やっぱり不器用な人。誤解されやすいんだろうなという想像が容易にできる。かくいう私も、一瞬でも彼の発言を誤解して不快な気持ちを抱いてしまった。身近な人間の1人として、彼を理解してあげたいなと思う。

彼は恋愛をよく知らないと言う。冗談で「君が教えて」と笑う。私はなんだか照れてしまって「AIに学習させるみたいに教えてあげるよ」と皮肉っぽく返す。私も「こじらせて」いるし、不器用だし、純粋で、彼とお似合いだなぁと感じて可笑しくなってしまった。

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