会計に対する価値観を変えた事業再生の話
こんにちは、ナレッジラボCEOの国見です。
2013年に中小企業に新しいサービスの形を作って経営管理の価値を提供したいと考えて創業したナレッジラボですが、創業後、最初に取り組んだのは中小企業の事業再生でした。
それまで事業再生というとM&Aの手法を使った外科手術的なスキームしかやったことがなく、リスケジュールを中心とした中小企業の事業再生はほとんどやったことがなかったため体系だった中小企業の「事業再生ノウハウなどはありませんでした。
そのため、起業から約3年ほどは事業展開に課題を抱え資金繰りが厳しくなったクライアントの社長や従業員とただひたすら向き合い、なんとかクライアントの窮地を脱することだけを考え、動くという毎日を過ごしていました。
ただ、この3年間が会計士でもある僕にとって会計の価値観を大きく変えるくらいインパクトのある3年間だったという話をします。
ナレッジラボのやってきた事業再生支援
ナレッジラボとしては創業してから今まで150社を超える中小企業の事業再生支援を行ってきました。
クライアントは
・製造加工業(町工場からメーカーまで)
・飲食店
・スーパー・小売店
・ホテル・旅館
など業種を問わずに売上規模で1〜5億円くらいの中小企業です。これらのクライアントに対して、銀行返済のリスケジュールをするための再生計画が必要なので、作って欲しいという依頼からスタートするのが一般的です。
一社一社を見た時には、売上減少、特定顧客への依存、過去の投資の失敗、人材不足などさまざまな経営課題があり、別々の視点から事業再生に取り組んでいたのですが、事業再生支援に取り組み出してから約2年、20〜30社ほどのご支援をしている中で、同じことを言われているなと思うようになりました。
それは、事業再生支援の初期段階で資料のお願いをした時、
(依頼)販売データをください
→ データは残っていないし紙の請求書を足してくれへん?
(依頼)資金繰り表をください
→ 半年前に借入した時に作った資金繰り表でいい?
(依頼)試算表をください
→ 3ヶ月前のやったらあるけどいい?
(依頼)販売計画はありますか?
→ そんなもんは無いよ。作ってもしゃあないやん
(依頼)製品の原価はわかりますか?
→ 5年くらい前に一回出したことあるけどそれっきりやな
はじめはこんなものかなと思っていたのですが、どのクライアントに行っても同じようなことを言われるので、ここから業績が伸び悩んでいる会社の共通項が見えてきました。
それは、
経営判断にデータが活用できていない
ということでした。
データといってもBIを使いこなしたり、ツールを使ってデータ分析をするというような話ではなく、どこの会社にもあるはずの財務データ(高度な話ではなく試算表レベルのデータ)ですら経営に活用できていないという現状が事業再生フェーズではほぼ全ての会社で当てはまっていました。
会計のフレームワークで事業再生を徹底支援
この経営判断にデータを活用できていないという課題が見えてきてから、僕たちはまずどこの中小企業にもある会計=財務データを徹底的に活用して、クライアントがデータ活用をできる仕組みを作っていきました。
やったことは以下のとおりです。
① 財務データと入手可能な非財務データ(販売データなど)を統合して何が儲かっていて何が儲かっていないかを分析する
② 分析結果から伸ばすポイント、改善するポイントをデータで整理してシンプルな再生計画を策定
③ 再生計画を月次予算に落とし込んで、毎月の予算管理を徹底する(お尻を叩く)。
これを業種・業態・規模を問わず、ただひたすらやり続けました。(実際には、この①〜③に加えて、クライアント社長や従業員とのコミュニケーションの仕組みを作っていきました。この話もすごく学びが多かったのでまた別の機会に)
その結果、事業継続が難しいかもしれないというような会社もたくさんあったのですが、金融機関の支援も得られるようになり、実際に倒産に至った会社は数社に止まり、多くの企業は事業再生着手前よりも業績がよくなり、V字回復していった会社も結構出てくるようになりました。
僕たちが行っている事業再生支援はマーケティングや営業のコンサルティングではなく、顧客紹介やマッチングなどでもなく、部門別会計や予算管理といった管理会計を徹底的に中小企業に導入していく事業再生の形を作っていきました。
会計は僕が思ってたより圧倒的に力を持っていた
ナレッジラボを立ち上げて事業再生をやり始めるまでも、僕は会計士として監査、M&A、税務などいろんな領域で10年以上働いていたので、会計のことはわかったつもりではいたのですが、事業再生を会計のフレームワークで支援し始めてから、明らかに会計に対する価値観が変わりました。
それまでは、会計というのは決算書や有価証券報告書などの報告するためのもの、税務申告のためのもの、過去の業績を知るためのものという理解だったのですが、事業再生を経験してからは
会計をうまく活用すればこんなに経営は前に進むのか!
ということを痛感し、経営のためになくてはならないツールが会計なんだというように会計に対する価値観が大きく変わりました。
ナレッジラボを創業した2013年以降、事業再生や経営管理という領域でさまざまな中堅・中小企業のご支援をさせていただいたり、僕自身もナレッジラボという経営者という立場で中小企業の経営に携わってきましたが、事業を成長させるためには会計を中心とした計画&PDCA&コミュニケーションの仕組みがなくてはならないものだと考えています。
中小企業がデータを活用した経営を進めるためには、まず会計をベースにした仕組みが必要で、そのためにもっとも便利に活用できるのは会計・給与・経費などのバックオフィスのSaaS化であり、その結果をベースにシームレスに繋ぎ込んだ予算管理の仕組みを作っていくことが重要だと感じています。
この仕組みを中小企業に提供するためにナレッジラボとしては
・簡単に使える予算管理SaaSのManageboardを提供する
・必要なSaaSを組み合わせながら業務改善をするバックオフィス構築支援
・予算管理をサポートする予算管理支援や事業再生支援
こんなことに取り組んでいます。
ナレッジラボとして、事業再生から学んだこの領域をテクノロジーとコンサルティングでさらに進化させないといけないなと感じる今日この頃です。
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