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「日本美術をひも解く―皇室、美の玉手箱」展

東京藝術大学大学美術館で9月25日まで「日本美術をひも解く―皇室、美の玉手箱」展が開催されている。今は後期展示の期間だけど、前期展示に行ったので、その感想を。

展示室に入った瞬間に目に入る「菊蒔絵螺鈿棚」。その後ろには、丸窓に菊と小鳥の透かし模した仕切り。螺鈿の菊に目を奪われつつ、菊にいざなわれるように奥へ。内装と展示品が呼応しつつ次へ次へと進む。この先には何があるのか、仕切りをわくわくしつつ超える。その意味でも、玉手箱のようだった。

白眉は酒井抱一「花鳥十二ヶ月図」。これは、言葉にならない。その名の通り、12枚の掛け軸にそれぞれの月を表す花木や小禽、虫が描かれているのだけど、各月主題以外は、余白。その潔さの反面、小さい鳥や虫らの動きは愛らしく、配置にも「あ、ここにもいる!」と見つける楽しさもあり、さらに花木もそれぞれの特徴に合わせて、ぺったりと色を濃く塗ったり、たらし込みで濃淡をつけたりと描き分けられている。見れば見るほど発見があり、抱一の繊細な感性に感じ入ることができる。

「教科書で見た!」と興奮したのは、「蒙古襲来絵詞」。改めて本物を見てみると、臨場感満載。圧巻は場上で弓を引く群衆で、十把一絡げではなく、横縞の鎧の色や柄、馬一頭一頭の毛並や表情も微妙に描き分けられている。さらに、馬の脚かと思えば鎧の一部、弓の湾曲を見ていたはずがたてがみだった、という(意味は違うけど)人馬一体の塊。人馬人馬馬人が皆同じ方向を向き、鼻息荒く蒙古兵へと猛然と突き進む。砂煙にむせそうな気さえさせる迫力だった。

最後の見どころは「唐獅子図屏風」。特に、狩野常信と狩野永徳の獅子比べが面白い。常信はやや化け物感もあり、でも犬っころみたいな愛嬌もある。その反面、永徳は立派な神獣というたたずまい。狩野派といえど雰囲気には大きく違いがあること、発見しつつ楽しめた。

どれもこれも名品優品ばかりの展覧会。これは逃す手はない。

https://museum.geidai.ac.jp/exhibit/2022/08/bi-no-tamatebako.html

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