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悪霊退散

 重たい気持ちが抜けない。

 趣味の習い事では一気に集中して煩悩ひとつも気にならなかったけれど、
そのあとはずっと重い気持ち。言葉にできれば軽くなるかもしれないけれど、これがまた緊張でも不安でも嫌でもひとことには当てはまらないから困ったものだ。

 気分転換にお散歩しようと普段下りない駅で降りた私は強風に向かわなければならず何も考え事ができなかった。

 風から逃れようと目指していたカフェはおやすみだった。

 前からいってみようと思っていたお店は想像以上に古びていて、まだ味も出ないような中途半端な感じ。

 お腹もすいて頭に栄養がいかなくなったころ、やっとお昼ごはんで一番近いカフェに行ったのが今日の極めつけ。お店の規模に合わない楽器演奏会で頭が割れそうだった。
 
 迫力のある演奏、といえばなんだか聞こえはいいのだが、私にとってはお祓い同然だった。自分の中にいるこの重い気持ちがもしかしたら悪霊なんじゃないか、いや、自分自体がそもそも悪者なのではなかろうか、本当は美しく聞こえるはずなのに、悪者には、ドラキュラのにんにくみたいに効果覿面なのか。

 何が何だか分からないけど、異世界に行ってしまったような体験だった。いや、行くところだったのかもしれない。もう少しで連れていかれるところだった。注文の多い料理店だったらもうバターを塗りそうだった。

 気を確かにもたなければ。なんだかいつもとは違うものが私の周りにまとわりついている。

 …今日は哲学ならず。

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