繋がっている
彼が元気に笑っていた。
とある体育館で、私はお友達と劇を見ていた。
どうやら文化祭のようで、横一列にみんなで体育座りをして鑑賞していた。
「ほらみて○○くんだよ」「そういえばあの人さ」とか
たわいもない話をしながらお友達と眺めていた。
その隣に、彼が座っていた。
じっと画面を見たり、後ろの男の子に話しかけられたりして喋っていた。
ユーモアがあって面白くて、からっとしたコミュニケーションが心地いい。
笑った時に目が消えてしまうのがかわいい。
ふいに「だよね?」とその彼に話しかけられ、なんだかわからなかったけど「うん」と返した。
お友達に言った。
「やっぱり私、彼のこと好きだな。」
お友達は静かにうんとうなづいた。
彼は、高校一年生の時に亡くなった。
みんなで中学校を卒業した次の冬のことだったと思う。
15歳には、同級生が亡くなったということがよくわからなかった。
卒業して連絡が疎遠になっていた同窓生がそれぞれ不思議に連絡をつないでいた。
卒業してから1年もたたずに顔を合わせた。
遺影には生徒手帳に使っているような写真。
お化粧をされた眠る彼に花を添える。
過去の話だから、どうというほどはっきりわからないけれど、
私は彼が好きだった。
小学4年生とか5年生ぐらいだったと思う。
当時の親友には好きな人の話をしていて、
驚くことに席替えのくじ引きで彼女が彼の隣の席を引いた。
「くじ交換する」と彼女は言ってくれたけど、
私には隣に座る勇気がなくて、自分で引いた彼のふたつ斜め後ろの席に座った。
小学生だしそれ以上何かあるわけでもなく、ただ好きな人だった。
中学校に入ってからは一回も同じクラスにならなかったし、接点が減っておしゃべりすることもほぼなかった。
最後に喋ったのは、三送会の時だろうか。
みんなでダンスを練習しているとき、私と彼を含めた4人は音響係でやることなくうだうだお喋りしていた。
小学校の時は、呼んでいたニックネームもなんだかちょっと恥ずかしかった。
実は高校生になってからも、彼を見かけていた。
私は初めて映画を見に行ったその日、人ごみに彼の姿を見つけた。
彼もお友達と来ているみたいだった。
わざわざ駆け寄って声をかけるほどでもないかも、とそのままにしてしまったけれど今では話しかければよかったと後悔が残る。
きょうは夢で逢えた。
彼を思い出す瞬間が、年に数回ちゃんとある。
成人式の時期に合唱部のお友達と集まった時には、彼の名前が入った曲を歌う。中学2年生の時のNコンの曲が、偶然にも彼の名前の入った歌詞なのだ。
「空の下、僕たちはいつもつながっている。」
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