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渇望

 4年経っても私は変わらず生き急いでいる。

 夏から仕事を一旦辞めて学生の身になったのだが、半年は短いようで長い。その間仕事が全くなかったわけではないが、月に数日になってしまったから正直毎度ブランクも怖い。学生期間は来年度の自分の将来についてじっくり考え直す機会でもあり、定期的にキャリアの時間がある。

 私は通学が始まった時から既に焦っていた。特性「生き急ぎ」の持ち主は始まる前から焦りがちだが、時には「先回りをして動くことができる」なんていう良い面も持っている。おかげさまで年末までにはだいたいの方針が決まり、ちゃんと学ぶべきことに集中することができた。どちらもまさに運と縁だけれど、自分で驚くほど私は人に恵まれている。これから一緒に仕事をしていきたい、ついていきたいと思う人と働くことが私は何より幸せだ。

 さて、決まったにもかかわらず「生き急ぎ」の私は、仕事がはじまってからの先先のことを心配して技術を増やそうと先輩に相談をした。すでにフリーランスとして活躍する先輩とのカフェトークは非常に学びが多くとても楽しかった。結論は「今は今ある仕事に集中して質をあげて、いざ困ったらいつでも挑戦しよう」ということに。本当にそう。まだ始まってもいないのに焦るなんて早い。

 でも、私は自覚していなかった。今日、いつも私を見ている人に言われて気付いた。「はやく仕事がしたい」らしい。いや、そうだ。私は幸せなことに、自分の中で「この仕事で生きていきたい」と思ったものに触れることができ、そこで出会う方々に人生を救われ、仕事で悩んでも「あの人に会える」というそれだけでも頑張れる気がしてここまできた。しかも、自分がやっていることで誰かが救われるのならそんなに嬉しいことはない。もう仕事は私の大半を占める生きがいだ。

 仕事をしている自分のことが好きだし、その仕事をしている仲間も好き。仕事ができる人に憧れているし、できるようになりたいと頑張ることがとても楽しい。瞬間瞬間を楽しんでいたじゃないか、私。

 仕事の連絡内の小さな一文字の誤字でどきりとしてふわふわした夜。なくなっちゃったらどうしようかなあ、でも休めという暗示かなあなんて考えたりして、誤字なのに。誤字で本当に良かった。

 生き急いだって早く死ねるわけじゃないんだから。幸せと渇望を噛みしめながらゆっくり時を待とう。

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