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好きにならない理由


美容院という共通点を見つけた私たちは、
目が合えば話をする友人くらいになった。

それとほぼ同時期に、
学園祭に向けた準備が始まった。

私は裁縫が大の苦手だというのに、
どういうわけか仮装部門の責任者に選ばれ、
放課後は毎日衣装作りに悪戦苦闘していた。

そんな私を見兼ねて、
彼は衣装作りを手伝ってくれるようになった。

ミシンの下糸を巻く時には
必ず教室の片隅で本を読む彼を呼んだ。

「なんで何回言ってもわかんないの?」
と言いながら、
彼は呆れ顔でボビンを手にした。

正直わからないわけではなかった。
わからないフリをしていた。
少しでも彼と話したかったのだ。

私はその時すでに彼に興味があった。
もっと仲良くなりたいと思った。
しかし、
それはあくまで〝友達として〟だった。

〝好き〟
そんな感情を持つようになるなんて
1ミリも考えていなかった。

なぜなら、彼には彼女がいたからである。

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