表裏一体の関係
確かネット上で誰かがお薦めしてくれたから手にしたはずなのですが、詳細は完全に不明です。阿佐ヶ谷姉妹さんのエッセイ「阿佐ヶ谷姉妹の のほほんふたり暮らし」を読み終わり本記事を作成しています。阿佐ヶ谷姉妹の雰囲気と本書のタイトルの通り、どこか「のほほん」として、「ほのぼの」とした優しい雰囲気が、頬を緩めて笑顔にしてくれるような本でした。最近は少しシビアな内容の本が多かったので、「気分転換のために・・・」と思い選んだ本なのですが、この選択は大正解だったと思います。
今回は本書のなかで私が心に残った「泣けるエピソード」をご紹介したいと思います。阿佐ヶ谷姉妹のお二人が通っている中華料理屋さんのお話しです。この小さな中華料理屋さんは職人肌のオジサンといつも笑顔のオバサンのご夫婦でされていたのですが、ある日オバサンが急性心不全で亡くなられてしまいます。阿佐ヶ谷姉妹のお二人はお線香をあげて、残されたオジサンからいろんな話しを聞いたそうです。オバサンは19歳で結婚して34年間連れ添ってくれたそうです。だからこそ、オジサンは九つ年下のオバサンを大切にして、ケンカして泣かせたことなんて一度もなかったとのこと。そのためオバサンの死は相当ショックだったらしく、霊安室では一晩中オバサンと一緒にいて頬を寄せていたこと、お葬式の時も祭壇を見れなかったこと、お骨を1つ2つ食べてしまったことなどを涙ながらに話してくれたそうです。私はこのエピソードを目に涙を浮かべながら読みながら、このご夫婦の愛情の深さに感動していました。
その数日後、テレビのニュース番組で能登半島地震の被災された一人の男性のことが紹介されていました。地震で奥さんと娘さんを亡くされた男性が、倒壊した家屋から二人の遺品を必死になって探す姿でした。男性が奥さんから貰った腕時計と娘さんのスマートフォンを発見し涙する姿を見て、再び涙しそうになりました。ちなみに一緒に観ていた母は号泣でした。
能登半島地震と言えば、羽田空港での民間機と海上保安庁の航空機が衝突し大きな事故になりました。その際に民間機の乗客と乗員は助かったのですが、ペットが亡くなってしまったことでインターネット上では署名活動が起こるなど議論になりました。航空機でのペットの扱いについての賛否は別として、私はペットを飼っている人達にとって、ペットは家族同然であり、大切な存在になっていることは理解してあげたいと思っています。私の知っているペットを飼っている方々を見ていると、ペットが亡くなったときの悲しみは想像以上に深く、いつまでも心の傷が癒えないままになっていらっしゃる・・・飼い主の皆さんの大きな愛情を感じないわけにはいきません。
これらのエピソードは「大きな愛情を注ぐ相手がいる」ということと、「相手を失ったときに大きな悲しみと心の傷を持つ」ことが表裏一体の関係であることを教えてくれているように思えます。誰かを愛することは、その相手を失ったときの悲しみや辛さを受け入れる覚悟と、それを乗り越える勇気が必要になるのだと・・・。
多分、そんなことは多くの人たちは心のどこかで理解しているのです。しかし、愛情の裏側にそんな辛く悲しい苦しみがあるとわかっていても、人々は愛情を注ぐことを止めません。きっとその理由は、愛情を注ぎたい相手がいるということも、その愛情を受け取ることができる人やペットも、これこそが『お金では買えない本当の幸せ』だということを知っているからなんだよなぁ・・・と思います。