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#3「一瞬を切り取る」
私自身がメディアに露出することは多くない。しかし、写真が必要になる時は少なからずある。そんな時は必ずと言っていいほど広報室に所属する彼女に頼むことにしている。
フリーのカメラマンにオーダーするのではなく広報室の一社員である彼女に任せる理由は、彼女の撮る一枚には「こう見えてほしい自分」が切り取られているように見えるからだ。
それは彼女が「写真家」としての一面も持つが故、かもしれない。
ある日、業界紙に載せるために私の写真をひとしきり撮り終えその出来栄えを確認し
ていたら、ふいに彼女の指が私の顎をとらえた。
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「動かないで……次はこのアングルで撮りましょう。最高の一枚になりますよ」
芸術家にかかると被写体は身じろぎ一つ許されず不自由極まりない。
だが、この時ばかりは彼女の得物を狙うかのように爛々と輝く瞳に視線を奪われて、時間はあっという間に過ぎていった。