＃１４　SP3

「あの子が再研修？」

　珍しく姿を見せた研修センター長が告げた言葉をオウム返しするしかない私に、彼女は淡々と報告を続けた。

「先の社長襲撃未遂の際、襲撃者の対処時に負傷すると共に装備を損失し円滑な業務の遂行に著しく影響を及ぼした件を重く鑑みて、基本警備研修と上級実技研修８単位の再履修を含め―――」
「何を馬鹿な……彼女に落ち度はなかった」

　私の反論にセンター長は薄く微笑んだ。

「相変わらず社長はお優しい……でも、これはあの子の希望なのです」

　センター長が差し出した研修希望申請書には、確かに毅然とした筆跡で彼女のサインが書かれている。

「社長の一声で連れ戻すこともできますが、それはアレの為になりません。社長が成長を信じてくださることがあの子の『北極星』なのだということをお忘れなく」

　それを聞いて、その昔「他社に引き抜かれるか残るか」で悩んでいたセンター長に向けて自分が言った言葉を思い出した。

『悩んでるくらいなら、今から言うことを心に刻め』
『「私が君を必要としている」それが君の「北極星」だ。もう、迷うなよ？』

　あまりに青臭いセリフを吐いた過去の自分を思い出して口をゆがめる私に朗らかに笑いかけ。

「私が直々にあの子を鍛え直すんですから、社長は期待してお待ちください」

　自信満々にそう言って、彼女は社長室を後にした。