対数の指導で思うこと②
数学IIの対数関数の指導で「両辺対数をとる」ことをどのタイミングで使うようにするべきか、考えたことをメモとしてまとめます。
対数の指導について思うこと①は以下のリンクからどうぞ
「両辺対数をとる」とは
まず、「両辺対数をとる」というワードが教科書で初めて出てくる箇所を紹介します。対数の定義を終えて、性質として扱う、底の変換公式の証明で初めて出てきます。
「両辺の対数をとる」とは等式の両辺にそれぞれ左から同じ底の$${\log}$$をつけることを意味しています。「つける」操作だが「とる」というのは数学界以外では違和感がある表現ではないだろうか。
表現の違和感よりも、数学を学習する人が気になることが、この「両辺対数をとる」という操作が許されるのかということである。実はこの「両辺対数をとれること」はここまで一度も説明されていない。教員として実際に授業で取り扱う時もいきなり出てくるなという感覚がある。
この「両辺対数をとる」ことが許されることが教科書で登場するのは、この底の変換公式のあと、対数関数のグラフの単元である。
教科書ではここで初めて両辺対数をとることが許されるということが記載されている。しかし、底の変換公式はこれよりも前の学習内容である。
そこで、両辺対数をとることをしないで、底の変換公式を証明することを考えたので紹介したい。
対数の定義から、底の変換公式を導く
ここで使うのが、対数の定義
$$
a^{\log_{a}{M}}=M
$$
である。この表現については以下の記事で触れている。
これを利用した導出が次のようになる。
底の変換公式という名の通り、$${b}$$という数を別の底$${a, c}$$に変換することで得られる公式である。指数と対数は表裏一体なので、指数の表現で底を変換すれば得られるのでないかというアイディアで導出した。
ただ、この導出がわかりやすいのかどうかという観点では疑問である。やはり教科書の説明通り、両辺対数をとる方がわかりやすいと思う。
「両辺対数をとる」を使い始めるタイミング
僕自身、両辺対数をとることを利用するのに最も相応しいタイミングは、対数を含む方程式・不等式からだと考えている。理由は、このことは対数関数のグラフを学習した結果として理解できることだからである。であるならば、それより前に学習する底の変換公式では両辺対数をとらずに考える必要が出てくる。その工夫が今回のメモになる。