見出し画像

ファーブリ・ゾルタン(Fábri Zoltán)の経歴と作品

ハンガリー出身の映画監督ファーブリ・ゾルタンについて、経歴及び全作品とその受賞歴をざっくり調べたのでまとめておく。
※画像はIMDb、経歴と受賞歴は英語版WikipediaとIMDb、作品はIMDbとMUBIのデータを記載。

・名前の表記について

マジャル語では日本のように姓→名の順で呼ばれるため、ファーブリ・ゾルタンと呼ぶのが現地の呼び方には即している。しかし、日本ではゾルタン・ファーブリと呼ばれていることが多い。今回はハンガリー映画史を執筆している身として、マジャル語読みに統一させていただきたい。

・経歴

1917年10月15日、ブダペストに産まれる。
1935年に画家になるべくAcademy of Fine Artsに入学するも、38年にコースを変更し、演劇監督になるためにAcademy of Film and Dramaに再入学する。
1941年より、彼は国立劇場の監督、舞台デザイナー、俳優として活動を開始。その後50年代にかけて演劇を何度か上映する。
1950年にプロダクション・デザイナーとして映画界に入り、1952年に『Vihar (Storm)』で映画監督デビューを果たす。彼は二次大戦中は捕虜として過ごしたため、彼が荒れ果てた故国に戻った際には"情熱的な"反ファシスト的な考えを持っており、人間の尊厳を守るため、映画監督になったらしい。
1956年には監督三作目『Körhinta (Merry-go-round)』が第9回カンヌ国際映画祭に出品され、その美しい映像を激賞される。
同年の四作目、ファシスト時代の遺物を描きながらスターリニズムを批判した『Hannibál tanár úr (Professor Hannibal)』はカルロヴィ・ヴァリ国際映画祭で激賞された。
1959年にはHungarian Film Artist Unionの代表に就任し、1981年まで職務を全うした。

ネオリアリズモやフランスの詩的リアリズムに影響を受けたファーブリは、小説原作で古典的な作風の作品を多く作った。そのため、実験的な作品の目立った同時代のヤンチョー・ミクローシュなどに比べて政府に気に入られていたらしい。とはいえ、代表作『Az ötödik pecsét (The Fifth Seal)』(1976)ではいくつかの超現実的なシーンを含んでいた。同作は第10回モスクワ国際映画祭で金賞を受賞し、第27回ベルリン国際映画祭にも出品された。
また、脚本や演出を完全に統制下に置く、いわゆる"完璧主義者"だったため、撮影の何ヶ月も前から各シーンの詳細を決めていた。彼は厳格で暴君のような人だと言われていたが、『A Pál-utcai fiúk (The Boys of Paul Street)』(1969)ではアメリカ人やイギリス人の子役に対して優しく接していたようだ。
第二次大戦前後を題材にすることも多く、女優のトゥルーチク・マリや撮影監督イレシュ・ジョルジなどを起用することも多かった。また、俳優としては友人のバチョー・ペーテル監督作『A tanú (The Witness)』に出演している。

1979年、第11回モスクワ国際映画祭で名誉賞を受賞する。

1994年8月23日、心臓発作で亡くなる。享年76歳。

・全作品一覧

太字は記事のある作品です。よろしければ是非。

・ Vihar (Storm) 1951
・ Életjel (Fourteen Lives) 1954
Körhinta (Merry-go-round) 1956
Hannibál tanár úr (Professor Hannibal) 1956
・ Bolond április (Summer Clouds) 1957
Édes Anna (Sweet Anna) 1958
・ Dúvad (The Brute) 1961
・ Két félidő a pokolban (Two Half-Times in Hell) 1962
・ Nappali sötétség (Darkness in Daytime) 1963
・ Húsz óra (Twenty Hours) 1965
・ Útószezon (Late Season) 1966
・ A Pál-utcai fiúk (The Boys of Paul Street) 1969
Isten hozta, őrnagy úr! (The Tóth Family) 1969
・ Hangyayaboly (Ant's Nest) 1971
・ Plusz-mínusz egy nap (Plus-Minus One Day) 1973
・ 141 perc a befejezetlen mondatból (141 Minutes from the Unfinished Sentence) 1975
・ Az ötödik pecsét (The Fifth Seal) 1976
・ Magyarok (Hungarians) 1978
・ Fábián Bálint találkozása Istennel (Bálint Fábian Meets God) 1980
・ Requiem 1981
・ Gyertek el a névnapomra (Housewarming) 1983

・受賞歴

Nappali sötétség (Darkness in Daytime)
ロカルノ国際映画祭:特別賞

Húsz óra (Twenty Hours)
モスクワ国際映画祭:グランプリ、FIPRESCI賞
ヴェネツィア国際映画祭:UNICRIT賞

141 perc a befejezetlen mondatból (141 Minutes from the Unfinished Sentence)
モスクワ国際映画祭:特別賞

Az ötödik pecsét (The Fifth Seal)
モスクワ国際映画祭:金賞

Requiem
ベルリン国際映画祭:銀熊賞

・他記事紹介

セルゲイ・ロズニツァの経歴と全作品 → コチラ
キリル・セレブレニコフの経歴と全作品 → コチラ
アリーチェ・ロルヴァケルの経歴と全作品 → コチラ
ファーブリ・ゾルタンの経歴と全作品 → コチラ


いいなと思ったら応援しよう!

KnightsofOdessa
よろしければサポートお願いします!新しく海外版DVDを買う資金にさせていただきます!