『背中で語る』(ショートショート#8)

日本で生まれ、日本で育つと、
こうなってしまうのだろうか。

背中で語る。

小学校から高校まで、
部活動でキャプテン、副キャプテンという
立ち位置をずっと持ってきた。
そのときに気を付けていたことは、
多くを語らず、
とにかく行動で示した。

理由は、
話すことが苦手ということと、
とにかく人見知りということだ。

それで、なんとかなってきた。
私の行動を見て、
ついてくる人が少しずつ増えて、
いつの間にか、
弁が立つメンバーがフォローをしてくれた。

こういう成功体験が、
今となっては、邪魔なのではないかと思っている。

今の会社でも、
チームをまとめる立ち位置だ。
そこでも、私は多くを語らない。
まずは、見本となる行動を示す。
言わないといけないことは、
チャットツールを活用して、展開をする。

それを継続して3年目。
だんだん、私への負担が大きくなっている。
そう、社会と部活は異なるのだ。

部活は、明確にゴールがあって、
役割は違えど、皆が近しい想いをもって
集まっている。

社会は違う。
売上という明確なゴールはあったとしても、
皆が同じ想いを持っているわけではない。
何の情熱も持たずに、売上を出す人もいれば、
情熱を持って仕事をしても、売上が平凡な人もいる。

こうなってくると、
背中で語ったところで、
響かない人が出てくる。
そこからひずみが生まれ、
不協和音が響き始める。

かといって、
私が急に、コミュニケーションを
積極的にとることも難しい。
おそらく、私が倒れる。
人見知りは変わっていないからだ。

協力者が必要だ。
ただ、その協力者を見つけるには、
また、背中で語るしかない。

ん?
これでは、何の解決にもなっていない。
人が来るまで待つしかないのだろうか。

それでは、社会人としては失格だろう。
限られた予算で、ちゃんと成果を出すのが、
サラリーマンのミッションだ。

どうしようか。
なんと話していけばよいのだろうか。
何を変えていけばよいのだろうか。

とりあえず、挨拶を、
少し大きめの声でやるところからだろうか・・・

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