20241016

 アントン・チェーホフの戯曲『かもめ』(湯浅芳子訳、岩波文庫)を読んだ。双子のライオン堂で開催される碇雪恵さんが案内人を務める「『雪の練習生』をゆっくり読む」の読書会に参加するにあたり、作中でトレープレフ役の役者が登場することから副読本として手に取った。チェーホフは村上春樹の「ドライブ・マイ・カー」でも戯曲が取り上げられているだけあって、少し春樹っぽさを感じた。作家を目指す若者トレープレフは女優を目指すニーナと付き合っているが。彼の母でもある女優アルカーヂナを訪ねて作家のトリゴーリンが滞在する間にニーナはトリゴーネンに惹かれていく。トレープレフの悲観的な思想と父の不在、その父を補うようなトリゴーネンという存在、叶わぬ恋の悲劇……マッチョリズムはないものの、ニーナという聖母的存在は女性の記号的な描写を思わせる点で春樹と共通するものがある。

いいなと思ったら応援しよう!